2012年5月31日木曜日

12大河 19−21話雑感

某所にて5/31公開

 相方飲み会で居ない夜に、3話一気視聴。3話一気視聴で良かったと思ったくらい、保元の乱前夜から終了までを見事に描いてました。

 なにはともあれ、保元の乱を時間を掛けて人物像を構築して描き切ったことを、ものすごく評価したいです。そして、久しぶりの「大河ドラマ」だったという巷の評判は正しかった!!!血沸き肉踊る戦場面以上に、戦になるまでの両陣営の心理戦とか主要人物を手抜かりなく積み上げた結果が見事に昇華され てた様に思います。

 各話感想とするのは勿体無いので、3話全体の感想とします。


 ここ数年の大河ドラマとは一線を隠す品質なドラマだと思うくらい、ちゃんとした「戦い」を描いてましたと思いました。下手にお涙頂戴でもなく、淡々と時間を経過を追うのでもなく、脚本家の都合のいいお人形たちが踊ってるのでなく、血肉が通ってる人々がそれぞれの「思惑」と「営み」が見える「戦い」でした。

 戦いの裏に居る、信西入道と頼長の「才」の違いをああやって孫氏の「兵法」(だよね?)を使って見せたのは、非常に巧い手法だったのではないで しょうか。同じ書籍からでも「解釈者の個性によって」まるっきり違う「答え」が導き出される。なんて普遍的であるのに中々理解されない事象を持ちだしたのかと、妙な感心の仕方をしてまして。いやぁしかもそれに対して一々説明しないのが、心地良い理由の一つだったりです。


 保元の乱そのものが、天皇家の兄弟喧嘩なのは学校でも習うこと。そして、両陣営にそれぞれの思惑を持って集まる人達もそれぞれ血縁があるのも同じ。なので、若干疑問符が飛び交いそうな関係性なのですが、映像しても物語としてもシンプルにいい意味で解りにくさはそのままに作ったなと思います。

 兄弟、父息子の対立関係を映像で見せつつも、説明ゼリフは極力省いて人物の「心理」は役者の演技と演出から掴ませる脚本と演出。いや心底私の好みでした!!!

 個人的にグッときたのが、21話の鎌田通清と源為義の会話でした。特に、通清の「殿をお守りするのは体だけでありません。殿の心もお守りする」 的な台詞。なんてなんて素晴らしい主従関係なのか!通清の忠誠心とかダメな為義への揺ぎない愛情に、男前ってこういうことなんだよ!と心で叫びました。い や、この3話の為義&通清はホントの意味で「格好いい」オヤジでした。

 為義さん繋がりで、頼長を一喝する場面の為義さんが格好良くて…。コヒさんの巧さ全開で、凄く嬉しくなりました。コヒさんの矛盾しつつも振り切れた時の潔い雰囲気は真剣好き。そして、その後ろで目を剥いてる悪左府な山耕も細かくて、うまい人達が遠慮せずにやってる感じってやっぱりイイなぁと思ったりしました。

 そして山本耕史な頼長君。19話最後の雨の中で崇徳上皇と出会う場面なんざ、おぉぉ!!!な位、悲壮感と敗北感と幻惑的な雰囲気で息を呑みました。いや、崇徳上皇な井浦新さんも見事だからそう思えたんですが。あの場面はその後の二人を暗示してるかのようで、綺麗で儚くて好きです。

 21話で自分一人鸚鵡抱えて逃げ出そうしてる頼長君とか、コヒさんな為義に一喝されて目が虚ろになってる頼長君とかは、あの鬼の副長だった山本耕史が!!と妙な驚きと同時にやっぱりいい役者だなぁと再確認しました。

 そんな頼長に対する阿部サダヲな信西入道。この3話でググッと存在感を増して、暗躍するようになったのが心底嬉しいです。信西入道の底知れなさとか生臭さとかが、じわじわと伝わってくるのが凄いです。信西入道の台詞については、何が背景にあって「この言葉を選んだ」のかとか「この言葉をこの人物に語る意味」は何なのかとかを考えてしまいます。19-21話が特にそれを強く感じました(それ以前は阿部サダヲが信西入道である意味があるのか!?とか 思ってたくせに^^;;)。

 真っ黒な信西入道の今後が楽しみ(史実を調べると余計に^^;;)。栄光を極めたあとの失脚をどう見せてくれるんだろうと、今後の楽しみが出来ました。

 一番のヒットだったのが忠正。清盛との関係を地道に積み上げた成果ですよね、これはホントに。無駄ない脚本だなぁと思います。忠正の「絆なんてこれっぽっちもない」な言葉なんて、積み上げて無きゃ意味がないものなぁ。それが観てる方がグッときて忠正の覚悟なりが伝わってきたのは、きちんと作り上げてきたから他ないです。勿論、忠正役の豊原功補さんの的確な演技ありきなんですが。まさか、忠正がこんなに印象深い人物になるとは予想外だったで す。


 他にも由良姫の女っぷりの良さとか、田中麗奈に対してこの役で初めて好印象を持ったとか、時子が徐々に安定してきて安心とか、池禅尼はやっぱり良いとかな女性陣にも当然思うわけです。男女問わず「素敵」と思えるのはいいドラマなんだと思います。


 あと國村隼さん!!決して登場時間は多くないのですが、父親としての屈託とか藤原摂関家再興の想いとかが伺えるのは流石だと思います。


 しかし、保元の乱が楽しみだ楽しみだと言ってましたが、ここまで大河ドラマな保元の乱になるとは嬉しい予想外でした。この様子だったら最終回まで完走できるかもしれない。