2016年4月10日日曜日

NTLive『橋からの眺め』

 今年3作目のNTLive『橋からの眺め』を4/8(金)に鑑賞。アメリカの知性と言われたアーサー・ミラーの名前は知っていたものの作品を観るのは初めてでした。観終わった直後は脳内を鋭い何かで掻き混ぜられて「目の前で何が起こっているのかを考えろ!」と言われたような感じになり、「アーサー・ミラーの映像化されてる作品見なきゃ! 戯曲読まなきゃ!!」と焦燥感に駆られました。

以下まとまりのない雑感





・『橋からの眺め』は1950年当時のアメリカ(おそらくNYとか一部の富が集中する地域な気がする)であった不法移民の問題と近親相姦の罪を絡めてるんだろうなぁと思うんです。が、今作だけの印象だとマーク・ストロング演じるエディが姪に抱く感情って、彼女だけでもここから抜けだして欲しいという想いと行き過ぎた庇護欲が最初にあったのが(違法移民を密告するような)誰が監視してるかわからない緊張感と不況を肌で感じる中違法移民に仕事を取られる不安感なんかが重なって「愛情を注ぐべき無垢な相手」への愛情を錯覚したのではないのかと。そして、狭い地域に住まい違法移民を匿う状況下で生じる閉塞感が感情を狂わせる方向に働いた気もして。どちらかというと、エディの性衝動はそういった過剰なストレスからっていう解釈なのかなぁとかウロウロと。
・確かに冒頭の場面からキャサリンとエディの濃い親密さは「若い奥さん????」と思わせるものであったのでその部分は違和感無かったんですが、なんとなくそれだけかなぁと。
・家族内の閉塞感がこれでもか! と描かれていた

・ロンドンで上演された時期が時期だけに違法移民とそれを受け入れる側の変化を主に見てしまったのもあります^^;
・移民側にも移民する理由があり、国と家族を捨てたことに対する後悔とこの地で稼がなければすべてを失ってしまうという切迫感、そこに家族の期待が乗せられている。しかも、違法だから常に行動が制限され人の目を樹にしなくちゃいけない緊張感、いつ密告されるかわかならい不安と恐怖、差別される屈辱が加わってくる。そんな状況だと鬱屈が生まれるもの当然だし、匿ってもらってる人との軋轢も生まれるのも必然なのだろうなぁと。

・全体の印象としては、閉じた世界が破綻する緊張感が半端無かったです。どこかを突いた途端に爆発するような、一歩間違えば奈落に落ちちゃうような不安定感とかが最初から最後まで途切れずあった。その中心であり縁を目隠しで歩くエディのマーク・ストロングが全身で不安、不信、閉塞、社会からの束縛を体現していて!!!! ほんとに本当に素晴らしかった。2015年のオリヴィエで主演男優も宜なるかなと納得しました。

・いろいろ考えさせれた作品だし、じっくり戯曲を読んで咀嚼したいです。

4/10 22:29追記
(作品とは直接関係ない余談を白地で)
 他のNTLive作品で劣るのがベネディクト『ハムレット』な意見をTLで見かけて、果たしてそこまで劣るのだろうか?? と疑問が離れない。確かに、演出面では意図がはっきりしない(特にガートルードの最後)部分はあったけれど、他のNTLive作品と比較してそんなに見劣りするのかと...。
 ベネディクトのハムレット解釈はそれなりに理論的であったし、存在が右往左往してるわけでもなかった。それはあの作品において必須であるけど簡単な作業では無いと思うんです。刺さるものがあることがいい作品なのかと言われれば、それは違うだろうしそれだけで判断してしまうのは怖いなぁと思ったりもして...。確かに、「刺さる」作品のほうが評価されるのは分かっているけど、然程海外の作品を観ていない一観客がそれを基準に優劣を語るのはどうなのかなぁと思ったりしてます。



2016年4月9日土曜日

映画『ルーム』雑感感想

 久しぶりにこちらを更新。個人的にとても重くて辛いと感じた部分があったので、Twitter(ふせったーの追記)を使ってあげてしまうのは抵抗がありこちらで長々と書きます。

 以下 映画『ルーム』(公式HP: http://gaga.ne.jp/room/ )のネタバレ含む箇条書き雑感。