昨夜観た『プロメテウス』の雑感です。
まず最初に断っておきたい点が2−3あります。
『エイリアン』を未見であることが一つ。これは恐らく、『エイリアン』を観たか否かでこの映画への印象や感想は、がらっと異なるような気がするので先に断っておきたいと思います。
次に、SFに関しても全く造形は深くありません。映像作品は映画だったら『2001年宇宙の旅』とかの有名ドコロの2-3作品。TVドラマだと『TNG』くらい。小説は若干読んでるかと思いますが、古典作品もハードSFも殆ど読めてません。真のSFファンの方から見たらとてもとても足元にも及ばないです。けど、SF的な設定は違和感ありません、てか大好き!!な程度です。
3つめとして、パニックホラー映画は全く観たことがありません。正直、リドリー・スコット監督の作品はこれが初めてです。
何故こんな前提を延々と書いてるかというと、この映画は好きな人は凄く好きな作品なんだろうなぁと思うのと、専門家のレビューがやたら高いからです。そんな作品について、こんなド素人があれこれ書くのはどうかと思いつつ、まぁ素人意見と思ってもらえればありがたいなぁ的な予防線です。小心者です、ごめんなさい。しかもネタバレ配慮なしの雑感です。
観終わった後の印象は「壮大かつ豪華なB級ホラー」でした。キャッチコピーの「人類はどこからきたのか?」に惹かれて、壮大なハードSF(というか思考実験,思考遊戯)かと思ってた私にとっては、正直肩透かしでした。
確かに映像は綺麗だったし、魅力的なキャラクターも居るし、パニックホラーな部分もお約束的に楽しめました。が、細かい部分で「その部分の検証は?あの挿話の回収はしないままなのか?」が多々あった気がします。
具体的に挙げるなら次の何点か。
◯「エンジニア」の意図。
冒頭の自殺なのか、単にDNAを放流するためだけなのか分からなかった場面から、最後の虐殺(なのか)目的の地球行きまで、エンジニア=創造主の意図が全く私には解りませんでした。そのため、彼らが何のために地球で自分と同じDNAを持つ生命体を作り、地球人と交流し、壁画に「招待状」を残し、 生物兵器を生み出し地球へ向かおうとし、自らつくり出した生物に絶滅させられるに至ったのかが全く掴めませんでした。もし、この映画があのキャッチコピー 通りだとしたら、これらについて少しでも描かれなきゃ拙いんじゃないかと思う部分です。
誤読で解釈するとするならば、エンジニアの意図とは「箱庭を作って壊す」ものなのかと。人のDNAには根源的に破壊衝動が組み込まれてるんだと。それが良くも悪くも本質の一面であるのだと描いたのかなぁとか。けど、万一そうであるのならば描き方が足りない気もするし…。
◯ディビットの存在。
ディビットそのものは好きです(これについては後述)。が、彼の行動についてやっぱり腑に落ちない部分が多かったんですよね…。
これまでの作品で描かれてきたような、アンドロイド(若しくはコンピュータ)による単純かつ積極的な悪意や叛乱でもなかった。かと言って、純粋な好奇心だけで破滅に向かわせるような行動を「彼ら」が取るのは可能なのか。万一、それが可能であるならばその根拠は一体にどこにあるのか、「ロボット三原則」との整合性はどうなるのか。この辺、『2001年~』はきちんと検証して映像として見せてたように記憶してます。
勿論、彼についても色々な解釈ができるとは思います。映画やその他の学習により、「悪意」を知り身につけた結果の行動や、純粋な好奇心から生まれた行動が結果として破滅を導いたとか、あの星やエンジニアが彼の予想を超えていたからの結果だった、とかとか。けれど、意図的に『アラビアのロレンス』を使っている以上そこには絶対「意図」がある筈で…。
『アラビアのロレンス』自体1回しか観てないのでアレなんですが、何となく「悪意なき裏切り」っていうイメージがあります。そこから引くと、 ディビットの行動もそうだったのかとかと思う部分もあります。がやっぱりスッキリ落ちないんですよね…。ディビットの動きが割りと要になってるので、これが分からない限りどうにも落ち着きが悪いんです。勿論明確にすっきり表現される必要は無いのですが、余りにも観てる側に与えられた「材料」が少ないと感じました。
◯企業の事業だった意味。
プロメテウス号の探査は、一企業でなく国家規模の方がよくなかったのかなぁと。
創造主に会いたかった理由が、一個人の「不老不死」って…とちょっと脱力でした。それなのに、最後は特攻しちゃうし…。特攻させるならやっぱり そこは「国」とか「国家」とか大きな何かに「忠誠」がなきゃ無理だろうよ…とか思ってしまい…。一企業に雇われてる人が自らの命をかけて「地球」を守ろう とするのか?そこまで企業が国家化してるのか?とか余計なことまで考えましてね…。
しかもそこに親子問題のもつれまで加わるから(^^;;。なんとなく、すっきりしなかったです。
◯既視感??
地球外生命体がDNAをばら撒いた設定は『TNG』でも観たことがあったし、エンジニアの管だらけの姿はボーグを思い出したし、アンドロイドの設定は 凄くデータ君っぽかったし…。と、『TNG』に特化してもこれだけデジャブだったら、他のSF作品を熟知されてる方たちからしたらもっとそうなん だろうと。その点における目新しさは、殆ど無かったのかもしれないです。 なので、「観たことのない映像」っていうのは煽りすぎなのかなぁと思ったりしました。
◯キャッチコピーが間違ってないか??
「人類はどこからきたのか?」では絶対ない!!これは声を大にして言いたい。
SFとか哲学ネタとしてこのテーマは散々扱われてますし、思考実験や嗜好遊戯としてのこういう作品は大好きなんです。類するテーマとしての「神(or創造主)は存在するのか」も含めて。だから、そこに惹かれて見に行った私にとっては、ちょっと肩透かしでした。
どちらかというと、(私は未見ですが)『エイリアン』前日譚で押したほうが良かった気がします。
さて良かった部分ですが、これは綺麗な映像とディビットなマイケル・ファスベンダーとメレディス・ヴィッカーズなシャーリーズ・セロンの美しさに尽きます(笑)。
マイケル・ファスベンダーが好きなら、いや彼に興味がなくても美形が好きだったら観に行ったほうがイイ!てか行くべき。だって、今作のマイケル・ファスベンダーとシャーリズ・セロンの美しさは超絶品だから!!。または、アンドロイドが好きな人は絶対観たほうが吉、てか行くべき!!です。えぇと、上で書いてることの矛盾は無視してください(笑)。
シャーリズ・セロンですが、只管綺麗美しい格好いいです。まるで人工物のような冷たい硬質さと、時折見せる焦りや恐怖で感じる人間味の配分がイイんですよ。正直、彼女もアンドロイドな設定であっても違和感ないくらい完璧な美しさです。てか、ディビットより性能の良いアンドロイド設定の方が、私と相方は
真面目な話、彼女の設定は「父と確執のある娘」とするより、アンドロイドにしちゃって、アンドロイド同士で監視しあうとか、善悪をどちらかに象徴させるとかの設定のほうが緊迫感が増したんじゃないのかと思います。更にいえば、彼女以外アンドロイドと知らないとかだとミステリー要素も加算され気がしませんでしょうか??
画的にも彼女演じるヴィッカーズとディビットが会話したり並んで立ってると、綺麗過ぎてときめく余りため息しかでません。ただただ眼福の一言です(笑)。
そして真打ディビットなマイケル・ファスベンダーです。
観に行って良かったよ!!このキャラクターのお陰で、アンドロイドとかロボットとかが大好きな私にとっては、ホント真剣私得!!!!だったよ!!な映画になりました(笑)。
ちなみに、私はアンドロイドと聞くと「うわぁぁ見に行きたい」となり、勢い余ってスピルバーグの『A.I』を観に行ってジュード・ロウ演じるセクサロイドにがっつり心奪われたし、『スターウォーズ』も目当てはR2D2とC3P0だし、『TNG』もデータ君がメインの話は全部好きだし、『Wall-e』はPixarで最高作品だと信じて疑わないし、Wall-eとEveの恋模様は恋愛映画としても大好き。そんな嗜好です。
そんな私からしたら今回のディビットはね…完璧理想的なアンドロイドでした。冷たいようでいてどこか違和感のある温かさな人工美は勿論、作り物めいた表情、短縮語でない言葉、創造主への忠誠心、創造主への僅かな疑義、人との差異を知る時に揺らめく無垢な瞳、感情が無いはずなのにふと見せる「感情」。完璧でした。
彼が出てる場面は全部好きなんです。が、中でも一番好きな場面は、エンジニアの操縦桿を初めて観た所です。3D星図なホログラムの中で、好奇心とすべてを理解した満足感が綯交ぜになり陶酔したかのような表情。それが見事に美しくて綺麗で…。あの映像のためだけにWOWOWで放映された録画してもいいと思ったです(DVDまでは流石に ^^;;)。
設定としても非常によろしくて、人に尽くす様子とか、忠誠心とか、無垢さや無邪気さを感じる様とか、どこかミステリアスだったりとか本当に多彩です。だからこそ、上で書いてるような「悪意」の有無が気になって仕方なかったんです。彼はどこまで「知って」結局「何を目的」としてたのかと。私の中では、ディビットは全員を少しずつ「裏切って」るんです。故に、目的があってそうなったの が、偶々そうなったのかが凄く知りたいんです。そうじゃなきゃ、この作品の軸がわからないような気がするし。まぁそこまでじゃないのかもしれないとも思っ てますが(苦笑)。
あと、どうしてもアンドロイドって似通った設定になるなぁと改めて感じました。『ブレード・ランナー』や『エイリアン』なんかの作品を見ていないので、なんとも言えませんが。やっぱり異質な存在で、人間へ興味があってより人間に近づこうとする。この辺、「ピノキオ」からの影響なんでしょうが、面白いなぁと思う部分です。そして、発音。ディビットも短縮形を使わなくて、あぁこの辺もデータ君と同じだと思う私がいました。『エイリアン』のアンドロイ ド(イアン・ホルムが演じてたと知って俄然興味が湧いてます^^;;)も見たいんですが、作品のテイストを聞くと躊躇いがあって未見なんですよね…。う~ ん。
とかまぁ長々と書きましたが、結論としては『エイリアン』または美形が好きなら行って損は無い!という映画ってことでした。