2011年4月11日月曜日

「エマ」by 森薫 読了

某所にて4/11公開

 あちこちで評判が良く気になって仕方なかった、ヴィクトリア朝メイド物語「エマ」(森薫/著)全十巻を本日読了。購入をずーっと思案してたんですが、結局図書館でお世話になりました。全巻読んだ今は、文庫化したら揃えたいなぁと。

 メイド物語と言っても、そんじょそこらの軽いメイドものとは訳が違いますよ、お嬢さん!!階級社会に生きる人々をきちんと描き、階級がある事が大前提の社会の中で働く「メイド」達を生き生きと描いてる作品です。そして高い評判通り、きちんと考証された時代背景と細かで丁寧な書き込み、穏やかで優しい物語でした。

 ヴィクトリア朝のメイドに関する本は何冊か読んでいましたが、その本で解説されていた「メイド」達が描かれてるってのが何より嬉しいことでした。ブリブリのミニスカートでもなく、家事を行うに適したシンプルな服。メイドの中でも存在する階級(仕事内容で細かく別けられていたそう)をもきちんと描いてらっしゃいます。

 軸となる物語は、メイドであるエマと上流階級の子息であるウィリアムとの階級を超えた恋愛模様です。確かに確かにベタベタな設定だし、現実では中々ありえない御伽噺だと思います。が、エマとウィリアムの人物像が非常に好ましいのと、周囲の人々がこれまた好ましい方ばかりなので、然程違和感が無いです。
 とは言え、ストーリーを追う方はちょっと物足りない漫画なのかとも思ったりしなくもなく。実際、図書館で借りた順番は、2→3→4→5→6→7→1→8→10→9なバラバラさにも関わらず、物語を追えれちゃうと(笑)。
 確かに、人物関係には置いてけぼりにされちゃうんですが、物語の大筋的には無問題!でした。それだけ、主軸がしっかりした作品だとも言えるんですけど(^^)

 上記のような読み方をしたもので、いきなり上流階級のピクニック場面(笑)。誰が誰ね?!どういう関係ね?!と戸惑いました。特にエレノアとウィリアム、グレースの関係が全く分からなくて(笑)。それでも、辛うじて序盤から読めたのは幸いだったかとも思います。

 お気に入りのキャラは、ジョーンズ家の次女ヴィヴィー。彼女の無鉄砲で勝気でおしゃまな様子が心底可愛いくて×2(笑)。将来は殿方を思う存分振り回して欲しいものです。 と、メルダース家のメイド、ターシャ(笑)。物凄く駄目で可愛い子なんですよね~。兎に角、頑張れターシャ!!!な気分で楽しめるキャラクターです。
 好きなカップルは、メルダース夫妻。ドロテア奥様とヴィルヘルム氏の造形も好みなんですが、それ以上にラブラブっぷりが素敵なんです!読んでる方が幸せになっちゃうくらい、互いを愛しく思ってる様が描かれてます。

 この漫画、嫌いなキャラが殆ど居ないです。唯一貴族の暗部を全部背負ってる子爵が苦手なだけで…(彼の行動原理を支えている「何か」はわかるので、ある意味リアルなキャラです。その分、なんとも言えない嫌な気分になるという…。キャラとしてはホント上手く作ってると思います)
 それはきっとどのキャラも決して完全なる善人でも悪人でもない。個々に持ってるいろんな背景や柵などで動いた結果が、そうなるんだと読む側が納得できる存在感があるからだと思うのです。

 好きな話は、8~10巻の番外編全部(笑)。大判で買うなら、絶対この3巻です。中でも、"TIMES"が一番好きです。"TIMES"誌を介して市井の人々を中心に色々な階級や風景を流れるように描いていて、巧いなぁとため息が出ちゃうんです。台詞が多いわけでは無いのに、語りかけてくる物語があります。

 いい漫画読んだとしみじみしてる夕べでした。