2012年6月8日金曜日

『毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』北原みのり/著

某所にて6/8公開、7/16転記

 先週末、書店で立読にて一気に読了。読書メーターに感想は残したものの、字数制限で若干消化不良気味です。なので、こちらでざっくりとした雑感を。


 木嶋佳苗被告(控訴したからこれでいいのか)の事件は、発覚当初のセンセーショナルな扱いにかなりうんざりして、1審終決まで一切情報 は入れてませんでした。だた、そんな私でも知ってるあれやこれやな情報。なんでそれを取り上げて叩くのか??と思う事がありすぎて、更にうんざりしてました。この本で、おおまかな全体像を初めて眺められた感じです。そのため、かなり偏った感想になっていることを先に書いておきます。

 北原みのりさんのスタンスは、他の著作で知ってるのでこういう内容になるのは納得です。もう少し深く突っ込んでくれたら、とか、上野千鶴子の言説を引用するのなら、それについての著者なりの分析をして欲しかったとかな不満はあります。が、著者が見た「木嶋佳苗」像や裁判 で抱いた印象などが、とても興味深くて朧気ながらですが「木嶋ガールズ」なるものが生れた理由が見えた気がします。それだけでも私にとってこの本は価値がありました。

 立読みでざっくり読んだ私ですら被害者男性やそのご家族(母親)や男性検事などに、違和感と気持ち悪さを感じました。木嶋佳苗被告に対する違和感より、彼ら(彼女)らに対する方が大きかったです。実際傍聴された方たちにとっては、その違和感たるや想像以上に大きかったろうなと納得します。

 私が感じた違和感は、50歳前後のいい年齢の男性達が母親に依存してる姿。それを裁判所で供述することに何の違和感を感じてない様子。母親たちがそういう息子の姿を「美徳」かのように語る様。そして、同じ口で「女性」を貶める浅ましさ。なんだかなぁこれは一体、と呆然としました。

 中でも一番違和感を覚えたのが、木嶋佳苗被告に促されるまま避妊せず性行為に及んだ。にも関わらず、結婚となると「母親に相談」してたという件。それが 一人だけでなく複数人いた事にホント驚いたんです。結婚するしないは、確かに現代であっても「家」の問題かもしれない。だったら、相手女性にもしかしたら負担を 与えるかもしれない、「妊娠・出産」の可能性が生じるであろう行為についても、母親に相談すべきじゃね????と思ったんですよね。だって、もしかしたら 新たな「血縁」が生まれるわけじゃないですか。それって「家」にとって一番大切な要素じゃないですか、だったら「結婚の有無」と同じかそれ以上の問題じゃないのか?と。

 快感を得られる行為については「女性が許してくれた」という逃げ道があれば行えて、それ以外の「責任が伴う」行為に対しては母親の判断って、どんだけ自分勝手なのかと怒りすら覚えました。しかも、デートの服装準備も母親任せって…。母子密着は母娘だけの問題じゃないのか?!と。近現代の母子関係につい ては、きちんと調査されて分析されてる本を読みたい、とすら思った内容でした。

 次にデートする息子(40-50歳)の下着を準備する母親には恐怖心すら覚えました。しかも、デート相手の女性の容姿をコケ下ろす息子に何の怒りもなく、それどころか「そんな女性だったら云々」と供述する「老いた女性」がものすごく怖いと思ったんです。彼女たちにとっては、いつまでも「可愛い息子」であるのは理解できるとしてもです。じゃぁ同じ女性として、男性からそういう扱いを受ける「女性たち」に寄り添うことすら出 来ないのは何故なのか?という疑問が浮かんできました。 やはり、母子密着がキーワードのかなぁ。

 と上記の事を相方にグチグチこぼしてたら、「男性の自己防衛じゃないか」といわれ眼から鱗でした。確かに、母親(と父親)に嫉妬されないように、自分が傷つかなようにという無意識の言動だと思うと確かに腑に落ちる部分があります。  
 そして、某所で書いた感想に頂いたコメントに「自信の無い男性」とありまして、これもなるほどと。自信が無いから「親」に全てを委ね、母親の嫉妬を避けようとする。そして何一つ「自身」が無いから、性行為ですら「相手女性」に促される「まま」に避妊せず行える。それである部分までは整理できた気がします。やっぱり、色々な意見を見聞きするのは必要ですね。

 ところで引用されてる上野千鶴子のこの反応、「援交から思想が生まれると思っていた。生んだのは木嶋佳苗だったのね」は、とても衝撃でした。ある意味、 木嶋佳苗という思想が生れたと誤読できる余地がある気がして…。前後の文脈がわからないので、これだけではなんとも言えないのですが。これを引用するのなら 前後をきちんと引用して欲しかった気がします(その辺の甘さが若干マイナス要素か)。

 木嶋佳苗被告に対する印象は、かたる(語る・騙る)人なんだでした。「かたる」行為によって自身を装飾し、相手が欲しい姿を映し出せる人なんだというモノ。しかも、狙い撃ちにしてる世代が欲してる「料理、ピアノ、介護」を前面に出していくあたり、凄くニーズを掴んでるなぁと感心すらしました。 きっと、この方は誰にも期待してなかったのじゃないかと思ったりします。かと言って、孤独では決してない。そんな印象です。

 読み終わって、女性の価値ってやっぱり美醜と年齢、そして「女子力」なんだなぁと溜息がでました(苦笑)。マスコミが煽る部分もそれだけ。同じ 事件を男性がおこしたならきっとこういう報道はしないだろう、と思うくらい「容姿」「年齢」「趣味」に偏った内容だったのを知るにつれ…。もし、これが無罪となるならば(控訴した以上可能性は無きにしも非ず)印象操作し倒してる報道関係はどう謝罪するんだろう??と思うくらいです。

 いやしかし、男性と女性の非対称性をこれほどまで意識させられた事件ってなかなか無い気がします(^^;;。もう少し、色々関連情報調べて整理したいなぁ。