2004年11月1日月曜日

新選組!43話【決戦、油小路】

 今回ほどOPのナレータ(「(時代の)波に乗れなかった」)が的確に突いてきた回はなかったと思います。時代を読んで動いていた筈なのに、「時流」には乗れず時代に斬り殺された伊東。時代にも時流にも取り残されつつある「新選組」。
 惑いながらも疑うことなく「未来」を信じて、そしてある時代に付添い殉死した平助。

 何より、41話以降感じてはいることですが、幹部連の意思(方向)転換(法度の形骸化や、御陵衛士の参加の禁止等々)が隊士達へ伝わっていない状態に、言葉がありません。
 伝わっていないが故に「法度」への畏怖と「幹部(=土方・近藤ライン)」への畏敬が、今以て隊士達を支配している。だから、大石鍬次郎のように「力」で異分子を排除しようとする動きが出てきたんじゃないかと。そして、彼等が個人的に武田を排除した時点で、幹部連は何らかの手を打つべきだったんじゃないのかと?!甚だ疑問に感じました。
 しかも「近藤の意」に反して伊東を斬った大石を、「近藤先生のためにやったことだから」という理由のみで土方が庇う構図は、一体?!。土方があの理由で大石を庇うのであれば、近藤の存在(意思)とは組織にとって何ぞや?!と疑問に感じました。一番の問題は、近藤・土方ラインでかなり齟齬があったり、意思疎通ができてない事なんですが(苦笑)。

 更に、幹部連が隊士への意思通達をきちんとしていれば、平助は死ぬことは無かったんじゃないのかと(涙)。近藤・土方の遣り方(組織運営)の拙さにどうにもこうにも悔しくてなりませんでした。

以下雑感

○平助
・彼は最期まで惑って揺らいで、それでも信じる事の根底は疑うこはなかった。
・彼の戸惑いや揺らぎは彼自身の弱さではなく、優しさや多感な思い(もしかしたら平ちゃんも気づいてない強さ)から出てきていたと思います。だから、平助はどんなに鬼神のような表情であっても、最期まで皆から愛された平ちゃんだった。
・特に、左之に逃がされて戸惑う姿、御陵衛士が斬られる様子を呆然としてる姿、多くの思いを断ちきって新八に最期まで向かっていく姿に、今までの平助と、何かを捨てて大きく成長した平助を見ました。
・彼はその気質故に、伊東からも近藤からも「大切」にされたんでしょうね。
・しかし、平助が持つ幼さでは伊東が平助に対して示される「愛情」なり信頼は解り辛かった。
けれど、最期は伊東の信頼を理解し、近藤の愛情や信頼にちゃんと報いた(誰もそんな形では望んでなかったけど)。
・しつこいようですが、物事に対してある意味柔軟で聡明で、何より誠実であった平助の未来見たかったです(涙)
・前半〜中盤にかけて、平助の存在にどれほど和まされたことか。平助がいるだけで、ほわっとした雰囲気になることに、安心感さえ覚えてました。
・彼の殺陣の瞬間に、回想シーンが全く挿入されない作りにも関らず、それらがフラッシュバックされました(総司とおかず取り合いしてる姿とか、寺で場所取りしてる姿とか)。
・中村勘太郎君、お疲れ様でした。そして、最期まで愛された平助を演じてくれて、本当に有難う。

○伊東先生
・伊東先生は加納さんがいるからこそ、伊東甲子太郎として事由に振舞えたんだな・・・と。
・岩倉との遣り取りは、ホントに胃が痛くなりました。どうやっても岩倉卿の方があらゆる意味で「上手」だと、思い知らされました。
・己への矜持はあるけれど、絶対的に己を信じられず、また他人をも信じられない弱さが彼が時代に振られた要因だったのかな、と思ったり。
・谷原伊東は、巧いな…確かに鏡で表情研究しただけのことはあるな、と。説得力のあるお芝居されますよね(特に、内面と台詞が乖離してる時ほど、説得力が増すというか)。

○近藤伊東会談
・近藤の「それでは(私を)言いくるめられません」は、近藤の持つ深淵を見た気がして「ぞっ」としました。近藤は「他者」と対峙して、対峙した者の何かを「飲み込み」、大きく変化していく存在として描いているんだ、と今更ながら気づいた次第です(笑)
・近藤と伊東先生の違いは、命掛けかどうかだったんですね。そりゃ伊東先生、呑まれるわ。
・この場面で改めて、三谷「新選組!」における軸足のブレが無いことに驚かされました。誰もが、身分なり所属による壁にぶち当たり、もがいている様を描きたいんだとも(そういった意味で坂本は超越した存在で、だからこそあそこまで魅力的だったんですね)。
・しかし、「あなたとはもっと前からこうやって腹を割って話すべきだった」っていうのは、勘弁してください(涙)。それって山南さんの時の教訓じゃなかったんですか?!近藤局長っと、罵声浴びせそうになりました(苦笑)
・伊東先生の「策士、策におぼれる」様が素晴らしく良かったです。(誉めてます)

○平助、総司。
・なんて、暖かい場面なんだろう…
・互いを思いやって、互いを信頼してて、ちゃんと受け止めあってる。このドラマで唯一等身大の関係性を築き上げてきた二人なんだ、そう感じる場面でした。
・平助の「私たちは周囲に心配かけさせる役割なんですね」にほろっとしました。また、それを受けた総司の表情の柔らかい事ったら(涙)
・平助の最後の驚き顔、最高に可愛かった。
・この二人が、心底愛しくてなりません。

○その他
・何かを企んで、実行する時の土方の活き活きした様子って。彼自身、組織が追い込まれ始めてる事を、薄っすら感じてるんだろうか、と思ったりしました。
・今の土方と近藤は、うっすら乖離してることに彼等は気づいてるんだろうか?!とも思ったり。そして、山南さんの時と違うのは、土方が必死で「近藤の意思」を汲取ろうとしてることだけのような。
・皆が平助に「戻ってこい」と言う場面は、切なくて切なくて。そして、「大丈夫ですよ」と笑顔で言い切る平助のあどけなさが愛しくてなりませんでした。
・総司の「貴方達が思ってるほど子供じゃなんだ!」は、精一杯の表現で、大人組にしたら突き刺さる言葉だったんじゃないかと。年下組は年下組なりに、培ってた思いがあったり、それを糧に日々成長してきた。それを一番理解してたのは、一番近しい者同士だった、とそんな事を感じたり。
・戦闘時、左之が冷酷な面を見せつつ、平助にだけは温かい目を向けてたり、新八が平助の剣をきちんと受けつつも「生かそう」としてる姿に、彼等の歩んできた時の長さと絆の強さをひしひしと感じました。
・また土方の中の歳三が泣いてるよ…
・源さんは本当に辛いだろうな…
・この段になって捨助らしさに、救われ始めてます(笑)

来週は局長襲撃で、その次は(大泣)
最終話まで心穏やかに鑑賞できないような気がしてきました(今更ですがね/笑)