2004年8月24日火曜日

そうだったんだ。

 日参させていただいている 白牡丹のつぶやきで考察・分析を拝見しては、毎回喉に刺さってた骨が取れるような思いをしてます(よく解らない例えでごめんなさい)。
 第33話「友の死」……真の悲しみは言葉で表せない(続)を拝見して非常に腑に落ち、池田屋以降の土方・山南さんの関係が納得できる気がしました。

 
斎藤さんが語る、土方さんと山南さんの信頼関係。これは、池田屋に先立って、文久3年秋から暮れ頃、または元治元年1月とも言われている岩木升屋事件。
 (中略)
 ともあれ『新選組!』では、土方さん、山南さん、斎藤さんが踏み込んで、浪士たちを斬るという展開。そして、刀を折られた山南さんが浪士に追い詰められた時に、土方さんは山南さんを助けるために浪士を斬る。

 これは、私が先日の雑感内で完璧に抜かしてた部分です。大切で重要な場面と感じながらも、すんなり記憶に入ってこなかった33話唯一の場面でした。この場面を白牡丹さまは下記のように示されます。

これが、白牡丹が「ミッシングリンク」と呼んだエピソード。芹澤鴨さん達を暗殺した時に、山南さんは人を斬れないという限界を知った。その場に居合わせたのは左之助くんだけで、土方さんは知らない。だが、この岩木升屋事件で、土方さんは、北辰一刀流免許皆伝でありながら山南さんが実戦で戦えないことを知ってしまった。
 大刀を折られたら、普通は脇差しを抜くはずだ。でも、手を掛けていながら脇差しを抜けない山南さんは、実戦向きではない。

 この部分を読んで、欠けていたピースが嵌った感覚になりました。
 何故、池田屋事件や禁門の変で、土方が山南さんを実戦部隊から外したのか。
 何故、外されたことについて山南さん自身が嫌悪を示さないのか。
 それは、芹沢暗殺で山南自身が、枡木屋で土方が気づいた「山南の弱さ」を基に築いた間柄だったからなんだと、初めて気づかされました。

 次に白牡丹さんはこう示されます。

池田屋事件、禁門の変の出動の時に、なぜ土方さんが山南さんを屯所の守りという後方支援の役に就けたか。それは、土方さんが山南さんを疎んじたためではなく……土方さんなりに、山南さんを気遣っての配置だったのだ。

 これは、土方視線を持っておられる白牡丹さんだからこそ理解できる、「気遣い」だと感じます。そして、ある時点まで土方と同じ視点に立っていたであろう、山南さんにとっても「理解」し得た筈です。
 ただ、山南さん視点を想像すると。
 一度実戦から外れてしまった以上、山南さんがある種の「疎外感」を感じずには居れなかったであろと思います。人は一度でも疎外を感じると、「視点・視野」も変化すると思うのです。その変化は、何より北辰一刀流免許皆伝という「矜持」が僅かでも傷つけられたと感じる方向に作用したとも思います。また、「武」が無理なら「文」でと方向転換しようとした際に、伊東一派の参加があった。そして、ますます「自分が作り上げた疎外感」を感じたのではないかと考えます。
 そして、「疎外感」を覚え視点・視野が変わったが故に、一度は受け入れたはずの「気遣い」が見えない棘になって、山南さんを追い込み脱走まで突き進んだのではないかとと想像します。

 
もちろん、新選組を戦闘集団にするために、後方に就く山南さんを含む隊士に褒賞金を出さないということはあったけど、それすらも、このことで山南さんが自分の共犯者であることから離れはしないだろうという土方さんの甘えがあったのだ……(以下略)

 この部分に関しては大きく頷きました。

 前回の「あんたの進むべき道は俺が知ってる」(凄い言葉だと仰け反りましたが・・・)は、土方にとっては、互いに「進むべき道」を模索してると信じてたからこその、最大の引止めの言葉だったんだなぁと改めて感じました。また憶測ですが、言外に「俺の進む道もあんたが知ってる」と伝えたかったんではないでしょうか。それは、同じ道を違う視線・視野で歩むことで、「組織」を成熟させることができると土方は信じ、山南も同じ思いだと信じてたからこそ、伝わる言葉だった。
 けれど、それは土方の幻想(甘え)でしかなく、山南は既に違う道を模索してた。そこに気づかなかったことが、山南さんに対する最大級の甘えだったんじゃないでしょうか。

 また、土方の幻想は山南さんの死の直前まで持ちつづけ、一方山南さんも一度は離れかけたけれど「悔やむことはない。君は正しかった」と土方に伝えたことで、同じ道に踏みとどまった(振りをしたのかも知れませんが)。土方だけの幻想では無いと、同じ道を歩んでたんだと最期の最期で土方の甘えを受け入れたようにも感じました。
 「此処には私の居場所が無い」と感じた者と「あんたの居場所は其処しかないだろう」と確信してた者のすれ違いは、本当に大きくて。最後に土方は「あんたの場所は此処にあるだろうが。なんで見えないんだよ」と無言でで叫びつづけてた様な気がしてなりませんでした。

 これから本当に土方・近藤は「組織としての」片輪を失って迷走し、振り返ることも立ち止まることも許されなくなるんだろうと痛感してます。