2004年8月27日金曜日

『鈍獣』感想

 クドカン脚本初体験ということもあり、かなりの期待と少しの不安(相性的な)を抱えて劇場に足を運びました。

以下ネタバレ含んだ感想です。

 なんと言うか…
 兎にも角にも三銃士の怪演というか、あの独特な存在感に圧倒されたお芝居でした(笑)。
 唄い踊る古田新太、踊りボケる生瀬勝久、駄目っぷりが見事だった池田成志に、思いっきり振り回された2時間強でした(笑)。そして何より、女装してる3人のコント(え?!)に「この人らここが一番楽しそう^^;;」と思ったのは、気のせいじゃない筈。
 
 舞台装置も凝ってて、場末特有の微妙な「安さ」と「豪華さ」が相まってホント異様な空間だった様な(笑)。それがまた、役者の「アヤシさ」とマッチして何ともいえない雰囲気でした。また古田が歌ってるときには、歌詞が電光掲示板に流れたりと非常に凝ってました。ただ、あの肖像写真は良いのか?古田??と思ったり(笑)

 危惧していた脚本との相性ですが…
 合う合わないレベルで言うと、正直合わなかったかな~という感じです。本当に微妙なんですが(>_<)。空間・時間の流れ・人の絡ませ方なんかは、本当に巧いなと思います。色んな事象がループして、結末に近づいて行く辺りなんかの構成力も凄いと思うし。  惜しむらくは、言葉がすんなり入って来なかった事と、提示された「怖さ」が(私の中で)消化不良になった事。  言葉に関しては、一つ一つは印象的だったり、面白かったりするんですが、全体を振り返ると「残らなかった」んです。また伏線になってる台詞もあるんだろうけれど、それが見えなかったし最後にカタルシスも味わえなかった(T^T)。ある意味、勿体無いな~と思いながら観てしまいました(いい台詞一杯在ったと思うのに)。  「怖さ」に関しては、すみません。先に謝ります(気弱な態度・・・)。怖くなかったです。  というか、これだったらTV鑑賞だった『こどもの一生』とかDVD鑑賞の『Vamp Show』の方が怖かったかもですf(^^;;;。後者2つについては納得できる「理」があって、それ故に怖かったと思うんです。  『こどもの一生』は、大人が「こどもの残酷さ」を持つ事、空想が現実になり「常識が壊れる」事、そして追い詰められる事、それらの「怖さ」があった。  『Vamp Show』は、人が「仲間」を殺していく時に感じる様々な恐怖。そして、突然「日常」が壊れることの怖さがあった。  そして両者とも「人でないモノ」と対峙するからこその「怖さ」もあり、その「人でないモノ」の定義づけが明確だった為一切の疑問を挟む余地が私には無かったんです。だから、人の残酷さや狂気がより浮き上がり、其処を「怖い」と感じたのかも知れません。  転じて『鈍獣』。  確かに「常識が通じない」世界特有の怖さや浮遊感はありました。ただ、「怖い」と感じたのは岡本が凸山を撃つ場面だけで・・・。今までのらりくらりしてた人間が突然に見せた「裡に抱えている冷酷さ・残酷さな性」が、怖くてなりませんでした(それらの性を自覚ながら表面には見えない、見せない人間の怖さも含めて)。  けれど、凸山が何度も戻ってくる事の「怖さ」は最後まで理解できず。そこが理解できなかったため、あの世界の恐怖が「共有」できなかったのかもしれません(--;;;。また、劇中でも「鈍い」と理由付けされてはいるものの、「何故?」が始終頭から離れませんでした。あの理屈付けさえあったら、人間の「鈍さ」をもっともっと「怖い」と感じれただろうに・・・と思わずにはいられませんでした。  美味しい設定だったのに。もう少し何かが欲しかった気がしてなりませんでした。  しかし、こんな風に引きずれるのがクドカン作品の特徴だとしたら、すっかり罠に嵌ってるのかもしれません(笑)。結局のところ、私が感じる「恐怖」と今回の「恐怖」がズレてただけなんでしょうが。そういった意味では、少し消化不良な観劇でしたm(_)m  女優陣に関しては、可愛かった~と「あの」おじさん達と一緒に良く頑張ったねとのコメントだけで(爆)