2012年9月23日日曜日

映画『鍵泥棒のメソッド』雑感

某所にて9/23公開、10/21転記

 週末のレイトショーにて鑑賞。

 秋以降に公開される堺雅人主演映画で一番楽しみにしてた作品でした。前作の『アフター・スクール』が私好みな脚本演出だったこともあって、堺雅人主演じゃなくても観に行ったかもなくらい楽しみにしてました。

  観終わった直後の感想は、堺君が各紙インタビューで言ってた通り「コンドウと香苗の恋愛物語」だったなぁです。この恋愛物語が凄くすっごく綺麗で可愛くて素敵でした。多少、物語としては緩い部分もあったり、強引?な部分もあったかとは思いますが、ある種のファンタジーと思えば気になりません。
 桜井とコンドウの入替りも無茶なのに無茶じゃなくて、見事に可笑しみとか哀しみとか愛しさに置き換わってたのが見事でした。いい作品を見る度に思うんです が、良い脚本でそれに合った演出がされて、それを体現できる役者が揃うというのがどれほど大事かと。入替りも香川照之と堺雅人という柔軟な二人が演じたから、ああいう可笑しみが生まれたんのじゃないでしょうか。

 印象に残ったのは、努力する人はどんな状況でも努力して掴もうとして何かを掴むし、そうじゃない人は結局そうなんだという当たり前なことでした。そして、それが物凄くイタくて…。コンドウでなく桜井に近い私にとっては、コンドウが桜井を説教する台詞がたまらなく突き刺さりました。確かにテキスト買っても(以下略。
 ただ、桜井みたいな人であっても受け入れられる、それはそれでいいんだよと言われてるような雰囲気もあったので説教臭いとは全く感じませんでした。単に、思い当たる節がある私にはイタかっただけです(^^;;。

 以下役者関係中心の雑感です。


・こんなに「馬鹿」な役は久しぶりなんじゃないかな堺雅人。凄く真剣に「馬鹿」でした(笑)。
・その桜井の前後考えない行動とか底抜けの考え無しさに愛しさを覚えたくらい、馬鹿で純粋で真っ直ぐなキャラだったです。
・口が常に半開きだわ、一々滑舌が悪いわ、挙動不審だわ、直ぐ感情的になるわ、言語不明瞭だわ、書き文字が汚いわと馬鹿さ全開な堺雅人が絶品でした。格好いい堺君が好きな人は見ないほうが吉かもしれませんが、堺雅人の芝居が好きな人は絶対堪能できると思います。
・ 監督との対談の中で「桜井は天使の役割」とありましたが、確かにそうです。世俗と隔離してるっぽいのに、やたら俗物っぽい匙加減が絶妙な天使です。きっと、桜井は本人が自覚してない中で人との縁を取り持ってるんだろうなぁ、桜井と関わった人は幸せになってるんだろうなぁ、と思わせる何かがありました。本人は激しく不幸だけど(笑)
・人の金で借金を返しまくる桜井な場面は好きです(笑)。彼にはその辺の線引ができないんだろうと、あの場面で分かりますもん。だって、全く罪悪感とか悪意とか見栄が感じられないんですよ!返せるから返さなきゃ!だけで動いてるのが、もう馬鹿すぎて(涙←嘘)。
・同じ境遇に陥ったコンドウが、アルバイトでも働いてて、役者としても認められて彼女もできてな状況を見た時、彼の胸中に過ぎった虚しさとか悲しさって如何ほどだったんだろうかと。あの場面はちょっと見てるほうが辛かったかな。
・最後の場面。あれは天使だった。誰がなんと言おうと、あの場面における桜井=堺雅人は天使だった!!初めて堺雅人を天使だと思ったよ!!
・大河でも同じ芝居するかも、と本人が言った場面。あぁあれはするかも、と思った私が居ました(笑)。
・相変わらず運転する場面はドキドキさせられます(笑)。一体いつになったらドキドキしなくなるんだろうか…。
・コンドウと桜井の場面は全部好きっ。香川照之と堺雅人の良さを堪能できる幸せです。

・そしてコンドウ役の香川照之さん。初めてこの人を「可愛い」と思いました。強面なのに、さりげない表情や仕草、口調、声が兎に角「可愛い」んです。そりゃ香苗じゃなくても好きになるよ、一緒に生きたいと思うよと納得でした。
・可愛さがね、スクリーンからダダ漏れで…。凄いよ香川照之!!とホント思いました。
・相方も「香川照之のコンドウは可愛いと思った」そうです。人間として「可愛い」と表現したほうがいいかもしれない。
・見てる間中、コンドウには絶対幸せになって欲しい、香苗と上手くいって欲しいと思えたのはその可愛らしさがあってこそだったと。
・何かのインタビューで「笑ってます」と仰ってた場面。確かに笑っておられました(笑)。そりゃあれは笑うわなぁ。堺君熱演だったもの。

・広末涼子は決して巧い役者さんでないのだけれど、居るだけで「可愛い」っていう才能がある役者さんだと改めて。
・広末演じる香苗の不器用さは好印象。なので、周囲がああやって盛り上げて支えてるのが違和感なく受け入れられました。その辺、ヘタしたら嫌な女となりうるんだろうけど、演出と本人の雰囲気が上手く咬み合ってたから「不器用な可愛らしさ」に見えたんだと思います。

・どうやら「キュン」がテーマだったらしい今作(笑)。キュンで印象深いのが香苗姉が言った「30歳過ぎたら『キュン』ってしなくなるの。それでも結婚はできるのよ」な台詞でした。それを聞いて、そうだよな「キュン」ってしなくなったよなぁと納得しました(笑)。
・てか昔から「キュン」は無かったような…。てか、キュンって何??と思った私です。いや、トキメキとかドキドキはあったし、今も時折いろんなものにドキドキしてるけどさと(苦笑)
・相方に言わせたら「キュン」にこだわり過ぎたきらいがあると。確かに、「キュン」じゃなくても成立するんですよね、この話は。トキメキでもいいし、何かわからないけどざわつくのでもいい。もっと大きいカテゴリーで表現された方が面白かったかとか思いました。

・個人的には前作のほうが好きだったかもです。

以下グチ。
 なんで劇場で飴を配るかおばちゃん連中は!そして、自宅で見てるかのように「ねぇねぇ今のってぇ」とか「あれってあれでしょう?」と会話するのか?!見ながら喋りたいんだったら自宅でDVDで良いじゃんよ…でしたorz。

 こんな愚痴で終わるのもあれなので、少し脱線話を。
・桜井的な役はマーティンが演っても面白いと思いました(馬鹿)。
・てか堺君もマーティンも巻き込まれ系の役多いですよね。
・なのに、インタビューとか読むとベネディクトに近い感じがあるのが不思議です。
・ 各紙のインタビューで一番興味深かったのが、「日本映画magazine Vol.28」。うろ覚えですが、「(生きてることを)怒られた事がないので、祝福されてるだろうと」という言葉がありました。これを読んだ時、この役者を好きで良かったと改めて思いました。他にも、堺雅人の為人が透けるインタビュー内容が多い1冊でした。