2012年9月5日水曜日

映画『ダークナイト・ライジング』雑感(ネタバレ)

某所にて9/5公開、10/20転記

 相方が出張で暇その上、上司海外出張手土産を買わなきゃいけかったので一人でフラッ街まで出てきました。そのついでに、映画館を覗いてみたらファーストデイとやらで1000円折角なので気になってた『ダークナイト・ライジング』を、お一人様で観てきました。


 相変わらずネタバレしまくりの雑感です。 



 時事や時代に即してあれこれ批評しなくても、エンタメとして楽しめばいい、好きか嫌いか決めればいい作品じゃないのかなと思いました。確かに、 あれこれ考えさせられる場面はあったし、ギリギリの部分で上手く避けてるなぁと感じる部分もありました。そう意味では、時事に合わせてあれやこれや分析したくなる作品なのも分かります。が、そういう面では隙というのか脇の甘さが若干ある気がするので、意図された方向は「エンタメ」だったんじゃないのかと思った次第です。

 巷で言われてた「持つ者vs持たざる者」という構図については、「持つ者」が勝利したのではないと思いました。ある局面において、どちらも「持たざる者」であり「持つ者」であったんじゃないか。支配する道具が「資本」から「暴力・恐怖」に置き換わっただけであり、人を「支配する」という欲望においてはどちらも同じ土俵にある。しかも、単純なる「正義」があるわけでもない。それどころか「正義」ですら時流において流動的になり、どちらの陣営も標榜することができるモノでしかない。そんな世界を見せてるだけの気がしました。

 何故こういう印象を得たのかというと、市民(と言ってイイのか…)vs警察の肉弾戦の場面です。権力の象徴である警察官隊が殆ど丸腰であり、それに向き合う市民が戦車とか銃火器を持ってる。どちらが先に発砲するのかと見てたら、市民側だったんですよね…。この時点で「持つ者」vs「持たざる者」 という単純な図式から外れたかなと。況や、圧政に対する暴動や米国の学生たちによる金融街でのデモとは、全く異なる図式であると思いました。
 そして、市民裁判の場面。結局のところ「市民が裁く」のって私刑になるんだよなぁと。それを人は歴史で繰り返して、その結果得た智慧により「法」が生まれた。そこを逆行することが果たして「是」なのかと。そんなことをツラツラと考えてました。

 他にも、原始共産制は永続性があるのかとか、法や国の範囲の限界とはどこなんだろうとか、持つ者がなすべきことは「富の分配」とか「ノーブレス・オブリージュ」とかなんだろうなぁとか。そんな事を場面場面では考えてはいました。


 ところで、富の分配云々についてなんですが、作中で触れられたような「福祉」を中心にするのがやっぱりキリスト教圏だなぁと。ある意味「贖罪」 の意味もあるんでしょうが、あれは方向性の一つとしてやっぱり正しいと思います。勿論、税制とかの強制力のある再配分は必須だとは思いまが、それ以上のものとしてそれらは有効なシステムだと改めて思いました。それに加えて、「文化」への支援なんかも「再分配」の側面が強いんだろうかとか。そういった意味では、日本というかアジア圏は遅れてる気がしなくもないです。


 でそんな戯言はさて置いて、色々雑感です。
言いたいことは大きく分けて5つ。 


 1.これは最初に声を大にして言いたい。爺俳優達、絶品すぎ!!と。爺俳優3人で3エントリー書けちゃうくらい、ツボ、ツボ、どツボの大嵐でした。その意味では非常に私好みど真ん中!な映画でした。ありがとうございますm(__)m
 2.アン・ハサウェイのキャットウーマンが絶品っ!!!アン・ハサウェイのあの肢体を大画面で拝めただけで1000円以上の価値はあった!!ありがとうございます!!でした(オヤジ丸出しな感想ですみません)。
 3.バットマンのガジェットってなんでもありかよ!!あれがOKならホント何でもOKだよね!!私は吃驚して、大笑いしそうになりました。
 4.トム・ハーディとベネディクトの映画(ドラマ?)DVDを買おうと決意させてくれてありがとう!
 5.バットマンことウェイン氏はやっぱり苦手なことを再確認。

 さて、細かくねちっこく個別に感想書きます。

1.爺俳優
 バットマン映画はこのシリーズだけでなく、ティム・バートン版でも執事とか敵さん目当てで見てる邪道な人です。そんな嗜好の私にとって、アルフレッドさんなマイケル・ケイン、ゴードン本部長なゲイリー・オールドマン、フォックス社長のモーガン・フリーマンな御三方が揃う今シリーズは、よっしゃ! きたこれ!!な映画です(なんのことやら)。
 

 そして、今作。何に一番胸打たれたかといえば、当然のことながらアルフレッドさんですよ!今作のアルフレッドさんは相変わらずのお茶目っぷりに加え、慈愛と後悔、悲しみというもう見せ場がたっぷりでした。
 正直、ブルース坊ちゃんはどうでもいいです。好きなだけ死地に向かえばいいし、勝手に初恋を追いかけて勝手に一人で孤独になってりゃいいよ!と すら思って毎回見てます(酷)。けど、そんな我儘勝手お坊ちゃんを支えるアルフレッドさんが、今作で初めて感情を顕にされます。その場面がねぇもう…。ア ルフレッドさんの深い愛情とか忸怩たる想いとかが見てる側にもガンガン伝わってきて、ブルース坊ちゃんを後ろからワインボトルで殴りたくなったほどです。 その時のマイケル・ケインの抑えた表情や静かな動きが素晴らしくて、大好きだっマイケル・ケイン!!と叫びたくなりました。ジュード・ロウとの共演映画 『スルース』は、やっぱり買ったほうが良いかもしれないとか思ったです。
 そして、墓場での言葉…。あの時の彼の思いを考えると胸が詰まりました。しかし!良かったね!アルフレッドさん!!。最後に救われてホントあれ はアルフレッドさんの為に良かったし、嬉しい場面でした。しかも、アルフレッドが夢を見ていた形での再会って!!いい奴じゃんブルース坊ちゃんって!にな りました(笑)。

 次にゴードン本部長です。やっぱりいいなぁゲイリー・オールドマン。TTSS観た後なので、ふとした表情とかがスマイリーっぽく思えたりしたの ですが、それはスマイリーとゴードン本部長の立位置が似通ってるから他ならないんですよね。将来を見据えつつ目前の問題への対応をする。そこに生まれる現実と理想のギャップや、法の限界等。彼を通して見える「ゴッサム・シティ」こそがリアルなんだと今作で初めて思いました。恐らく、彼がいるから今シリーズ の「ゴッサム・シティ」が作り物めいてないのかもしれないとも。

 しかし、ゲイリー・オールドマンは良いよなぁ…。くたびれた中年オヤジなのに、ふとした目線とか表情とかが凄くキレた感じがあって、凄く色っぽくて男前なんですよね。大好きだなぁと何度目かになる再確認をしました(笑)

 ウェイン社長のモーガン・フリーマン。渋いっ渋過ぎ!と心でどれだけ騒いだか(笑)。この方が画面にいらっしゃるだけで、もう目線は彼に釘付けです。基本、物柔らかで茶目っ気のある物腰とか表情なんですが、その中にちゃんと知性理性怒りなんかが見えるのが大好きなんです。正直、今作はあまり出演時間はありませんでしたが、どの場面もキチンと脳裏に残ってるくらい印象的です。モーガン・フリーマンもホントに大好きなんです。米役者で一番好きな人かもしれないです。余談ですが、一時期この方出演映画追いかけてたことがありました。好きになったら同じ行動しかしない私です(^^;;。


 で何が言いたいかというと、爺俳優好きなら観にいきやがれ!!です(笑)


2.アン・ハサウェイ

 通常料金で観てたとしても、この子に払ったと思えば惜しくもなんとも無いと断言できます。アン・ハサウェイは『プラダを着た悪魔』以降大好きでねぇ。あの愛くるしい真ん丸瞳とか、大きいのに下品じゃない口元とか、バランスの良い体つきとか、アカデミーの司会で見せた妙に愛らしいキャラクター(一 部で「お前がはしゃぐな!」と言われた例の司会/笑)とかにぞっこんです。なので、今作もキャットウーマンが彼女と知った時点で「見に行かねばなるまい」 でした(笑)。
 期待を裏切るどころか期待以上に魅力的なキャットウーマンでした!!おばちゃん心から満足しました。ご馳走様でした(何)。

 ただ1つ文句をつけるなら、もっと明るい場面でライダー姿が見たかったよ!画面暗すぎだよ!!素敵な姿が見えないじゃないか!です(すみません、変態です)。これはアン・ハサ ウェイの問題じゃないので、アン・ハサウェイのキャットウーマンについては何一つ文句なしってことです。

 表情がコロコロ替わって、衣装が黒1色なのにそれぞれ異なる雰囲気を醸し出し、レセプションの華のような淑女から妖艶な娼婦、更には気風の良い 姉さん的な雰囲気が素晴らしかったです。アン・ハサウェイ好きな女子は必見だよ!ホントに可愛いくて愛くるしくて綺麗で格好いいアン・ハサウェイだらけだから、観なきゃ損です。


3.ガジェット

 毎回ビックリするけど、今回ほど大笑いしそうになったのは初めてだった!あのまるで宇宙船的な空飛ぶ装甲戦闘車な乗り物は一体どうやって動いて るの???動力は何???社長一人で設計から製作までやったのか?とか疑問符飛びまくりでした。いや、そんなことを考えちゃいけない映画なのは知ってる。 知ってるけど、流石にあれは無いだろうよ!あれがよければ敵さんももっと凄くても良いんじゃないのか?あの技術力があればウェイン社は倒産しないだろう? 特許関係だけでも結構お金入ってくるだろう??とかもう夢も希望もない事がグルグルしました。
 あれが登場するたびに笑いそうになったんですよ。けど、周囲が全く真剣そのものな空気でしてね…。あれが可笑しいと思う私がオカシイのか…とちょっと凹んだです。

 あの空飛ぶ装甲戦闘車見た瞬間、これはエンタメだと割り切れました。その意味では、象徴的なのかもしれない。


4.トム・ハーディ

 TTSSでのター役でしか知らないんですが、ベネディクトと共演してるドラマがあるんですよね。そのDVDジャケットとTTSSのイメージと今作が豪く異なってて、役者って凄いなぁと感心したんです。体格まで変えちゃうって…。細っこいのが好きな私としては、ちょっとやりきれない何があったりもしまして…。多分近いうちにベネディクトとの共演作品DVD買います。
 余談ですが、『Star Trek2』のベネディクトがあんなにゴツくならなくて良かったと明後日方向な感想をいだいてました(笑)。スーツが3サイズUPしたくらいどうってことないよね…。あの手の肉体改造を見るたびに、アメリカ人のマッチョ好きだけはホント理解できないと思います。らの肉体に対する憧れとか、美的感覚って やっぱりどこかオカシイよ…とかブツブツ。

5.バットマンとブルース坊ちゃん

 今シリーズもティム・バートン版もバットマンとブルース坊ちゃんには、全く心寄せられなかったです。ティム・バートン版は、敵役に力が入ってたし魅力的だったしメインだったから、タイトル・ロールなバットマンはそれを際立たせるための素材だったと思ってるくらい興味が無いです。
 それに対して今シリーズは、一応バットマンとブルース坊ちゃんの内面に立ち入って描いてましたし、ある部分彼の逡巡なり葛藤がテーマだった部分 もあります。だけど、ごめんやっぱり私は駄目でした(^^;;。すみません。元々ブルース坊ちゃんとバットマンが好きじゃないので、かなり偏見に満ちた見 方になってます。

 今作で、いつまでも誤解の上で成り立ってる初恋物語に浸ってるウェイン氏が、鬱陶しいことこの上なかったです。アルフレッドさんが意を決して真実を伝えたにもかかわらず、「僕の初恋を踏みにじった」とか責め立てる中年にドン引きでした(酷)。

 自分の中で「正義」とか「真実」とか「強さ」とかが揺らいだ結果が、今作のウェイン氏。なのに、それをアルフレッドや洞窟の人に指摘されると相手を詰ったり、内省したりってどういうことよ?と。しかも、自社の経営状況なりを知らなくて「孤児院への援助」を撃ち切ったことを今更知らされて怒るって…どんだけ「持つ者」の自覚が薄いのかとか。恐らく、この辺の描き方が甘いというか粗いなぁと思いました。
 そのため、彼が見せる「優しさ」が物凄く中途半端に見えて、キャットウーマンとの恋模様や因縁の対決なんかの繊細さを感じる箇所に入り込めなかったのは、ちょっと辛かったです。

その他雑感

・3時間の上映時間ですが、全く長さは感じませんでした。
・バットマンとベインの肉弾戦は正直飽きました。私があの手の肉弾戦が好きじゃないだけですので、好きな人は楽しいとは思います。
・最後の最後。あぁロビンなんだぁと思ったです(笑)。あのコンビでバットマン&ロビンは見たいかもしれないとチミっとだけ思いました。
・ベインが肉体派だけじゃないってのが見えなかった…。確かに、戦略的な面はあった。あったけどアレだけじゃ知力体力が最高レベルってのは分からないよ…。しかも肉体も申し訳ないけど、ぷにぷに感の方が強かったし…。
・ベインがトム・ハーディになったのは、あれだったからかと納得。しかし、ズルいよなぁあの設定は(苦笑)。
・あんだけ地面ガンガン落として、その後の復興が心配です。
・「星条旗よ永遠なれ」と破壊工作準備が同時に進行する場面は、かなり好みでした。どう書けば分からいのですが、国が掲げる理想と現実との乖離が見えた感じがしたというのか。
・スタジアムで市民に「自由」を選択させるベイン。自由って解放って力づくで手に入れるものなんだろうか?力で脅迫されて手に入れるモノなんだろうか?「選ばされる」時点でそれは「自由」とは違うんじゃないのか?とか詰まらないことを少し考えました。
・リーアム・ニーソンが今作品では勿体無さ過ぎて(涙)
・ベインと娘の年齢差に違和感バリバリでした。多分、トム・ハーディが童顔だからそう思ったのかもしれません。あの目だけでも童顔って分かる凄さがトム・ハーディか(笑)
・洞窟にいた爺二人も結構よろしくて、あの二人の素性が知りたくてしかたありませんでした。やっぱり爺好きなのかorz
・劇場に言いたいこと。
 目線ど真ん中の席は良かったです。けどね、左右カップルってのはどうかと思うな(苦笑)。気にはしないけど流石の私でもちょっとあの状況は居た堪れなかったよ…。せめて1つ空けて欲しかったな(T^T)

・DVDが出たら爺トリオとアン・ハサウェイ観たさに買います。