2012年1月15日日曜日

柳家三三×北村薫『空飛ぶ馬』

某所にて12/18公開

北村薫さんの書かれる小説が大好きで、氏の作品群で最も好きな『円紫さんと私』シリーズを落語家さんが一人舞台として演じる舞台を観に行ってきました。
 ぴあからのDMを見た瞬間、行かなきゃ!!と即日でチケット入手しました(公演間近だったせいで残席少なかった…)。

 行くと決めてから、本棚から原作本を出し再読するという入れ込みよう。余談ですが、大学時代に偶然手にとってから10回は下らない回数読んでる文庫本です。そのせいで、カバーがボロボロだし汚れはついてたりします(^^)
 閑話休題。今回の再読では、「私」が取り敢えず可愛らしく微笑ましく美しく感じました。読んでる間じゅう「私」の言動にずぅぅと微笑みっぱなし。きっと、私が円紫さんの年齢に近づいたからなんだろうなぁと思ったり。そして、「私」が過ごしている「今」が、私にとって漸く「過去」となり、それ故に懐かしく美しく思えるようになったからなのかもしれないです。やっぱり、年取ったんだなぁ(笑) 

 そして、作中に散りばめられている色彩の美しさに目を奪われた今回でした。なんていうだろう、綺麗な川の底に色んなビー玉や石があってそれが空から降ってくる光でキラキラしてる。当然、自然の光だから影も陰もあって、それが更に色に深みを与えてる。そんな風に感じました。

 収められてる5編とも大好きなんですが、やはり「赤頭巾」の粘りのあるひそやかな悪意や「砂糖合戦」のちょっとした道を踏み外してる怖さは、なんとも言えない暗さを感じて印象深いです。この2編を読むだけでも北村薫という作家が、甘いだけの作風じゃないと思うんですよね。

 長い前置きはこのへんにして、本題の「柳家三三×北村薫」の感想です。

 語り始めた瞬間、言葉の美しさに不覚にも涙がでました。ホントに言葉が簡素なのに美しく響き過不足が無いんです。私の「北村薫作品」に抱くイメージはそれなんですです。そのイメージが、舞台上で音して表現されてることの幸福。
 「私」と正ちゃん恵美ちゃんの会話はちょっと違和感があったものの(女形っぽい感じがあって^^;;)、十分許容範囲の演出だったと思います。

 柳家三三さんが原作をお好きで原作を大切にされてるという言葉通り、とても丁寧に大切に原作を扱ってくださってました。それって、原作好きにとっては幸せ以上の幸せなんです!!勿論、心の登場人物とは違うんですよ。けれどね、違って当たり前なんです。その違いが原作無視からくるのか、そうじゃないのかくらいは一観客にちゃんと伝わるんです。そして、今回の公演は観てる間ずっと「好き」を感じたんです。それがどのくらい凄いことか!!!
 なおかつ、今回の公演は柳家三三さんの円紫さんや「私」を教えてもらったな、柳家三三さんの円紫さんと「私」はああいう感じなんだなぁなんてことを公演後思いました。しつこいようですが、これってホントに凄いんですよ!!(好きな作品が蹂躙されて別作品になってしまい涙したことは、多くの方が経験あると思いますが…)
 
 今回行って本当に良かったなぁと思ったのは、柳家三三さん演じる円紫さんの『三味線栗毛』を聞けた事。落語には縁遠いので、作中で演られる演目が分からないんですよね(^^;;。なので、一席まるまる円紫さんの高座として見せてもらえたので、更に再読が楽しくなりました。しかも、北村薫さんが小説で演出されてる『三味線栗毛』とのことなので(アフタートーク談)貴重というか、ありがたいというべきなのか。巧く言葉が出ないのですが、心が満たされた感がとってもしてます。

 次回公演(『砂糖合戦』!!!うきゃうきゃ^^)のチケットも今日買いました。次回の最大のお目当ては、北村薫さんと柳家三三さんのアフタートーク!!!!大好きな作家さんのお話を伺える機会なんてそうそう無いし、それが好きな作品のアフタートークだったら「行かなきゃいけませんっ」な勢いです。北村薫さん作品を好きになって20年近くになりますが、やっとそういう機会に巡り会えたなぁとニマニマしてます。ただ、ニマニマする対象が作家さん(しかもかなりのおっちゃん^^;;)なのが、女性としてホントにどうかと思うんですが…。やっぱり敬愛する作家さんは作家さんだから!!!と意味不明な勢いで納得しておりますです。

 あぁ来年3月が待ち遠しい!!!