2012年1月29日日曜日

『90ミニッツ』三谷幸喜作/演出 鑑賞

某所にて1/18公開

三谷幸喜脚本/演出の舞台『90ミニッツ』の感想です。

 「三谷幸喜大感謝祭」のトリを飾る今作。あの傑作『笑の大学』の脚本家と役者が揃っての新作、と聞いた時から「絶対行かねば!!」と決意してワクワクしてました。
 それなのに鑑賞中から今もって見事に困惑中です(苦笑)。

 三谷さんがインタビューで「今回は『笑い』がないシリアスな作品です」とおっしゃってましたが、ホントその通りでした。脚本・役者が意図した「笑い」は全くありませんでした。その上、何か宿題を渡されたかのような感じが残ってます。三谷幸喜は一体何処に向かうのか?こういう方向に舵を切るのか??かそんなことすら思わされたりです。

 「笑い」についてですが、皆さん笑いに来たんだなと感じた場面がありましたそれが、言葉の重複だったり立場を変えての言葉のやり取りだったりした場面だった事にちょっと違和感がありました。なんだろう、少しでも「齟齬」(脚本・演出上で計算されてる意図があっての)があれば、それを「笑う場面」だと思って反応する。同じような場面で「笑い」があったのは、そういうのが「三谷幸喜の笑い」と思い込んでるからなんだろうなぁとか思ったりしたんです。
 脚本と役者さんと演出の意図は解りませんが、私は「笑う」場面じゃないなと感じたんです。どちらが正解かなんてホントに本当に分からないのですが…ちょっと気になった部分でした。

 宿題というのは、エゴとか倫理とかについて。作品のテーマそのものですが、やっぱり見てる間も見終わっても「どうすればいいのか」「これについては、自分なりの答えを出さなきゃいけないのかも」と思わされてしまいました。
 この作品がシンドくて綺麗な纏まった感想が出てこないのは、きっと何も答えが提示されないからじゃないのかと思うんです。三谷幸喜の解答が無いからじゃないのかと。確かに、ある意味三谷幸喜らしい「幸せ」な結末でした。が、果たしてあれは、望みうる最高の答えなのか??と。
 命、信仰、職業上の倫理や義務、親の義務と愛情、其々のエゴ。舞台で見せられるそれらは、私達の日常に転がってるなのに、イザという時にしか直面しないモノばかりなんですよね。非日常にだけ現れる、日常的に飼ってるモノたち。どちらかというと、こっそりひっそり奥で動いてることに気づきながら、見ちゃうと痛いし汚いしどうにかしなきゃいけないから「見ない、居ない」ことになってるモノたちな気がします。
 それをああやってNonStopで見せられる(いや能動的に観に行ってるですが^^;;)と、否が応でも自分の中を覗いちゃう。だから、こう無性にモヤモヤが残ってるんだろうな。

 三谷幸喜は一体何処に向かうのか?については、『国民の映画』もしかすると『コンフィダント-絆-』からかな、何となく今までの三谷幸喜舞台から舵を切ったのかな…と思ってます。
 なんだろう。投げっぱなしな感じがするのかな。舞台上に綺麗でスッキリした解答とか結末を敢えて見せてない感じというのか。答えは観てる人が探せばいいさ的な感じというのか…。そう言えば、『新選組!』でもそういう雰囲気があったよな…特に山南と土方の対立や「ある隊士の死」とか40話以降の近藤の佇まいとかに(^^;;。
 恐らく、鑑賞後「スッキリした!面白かった!」を求める人には物凄く物足りないのかもしれないと思います。なので、この作品も凄く評価されないだろうなぁとかとも思ったりしてます。実際、一緒に行った相方の感想は「『国民の映画』も今作も三谷幸喜らしくない。延々同じテンポでやられても…。最後の最後に何かあってくれると期待したのに、あの終わりだと観客が納得しないやろう。脚本が責任から逃げてる気がする。だから、見終わってスッキリしない。こいうテーマを使うならもっと熟すか直球でやらんと難しいと思う」と酷評に近いものでしたし。
 ただ、私は意外とすんなり受け容れてるんですよね。演劇史に残らなくても、今こうやってグタグタ考えさせてくれるのは嫌いじゃない(^^;;。今、何も裡から出てこなくても、もしかしたら死ぬまでに何か思いつくかもしれないし、それはそれでもしかしたら楽しいことなのかもしれない、とも思ったりします。

 しかし、輸血拒否をある意味直球で舞台に乗せた事には吃驚しました。見終わった人の感想は殆どその件だったよorz

 今回は近藤芳正さんがホントによかった!!最後の最後の台詞はあて書きの妙だと思います。あの台詞を言わせるが為だけに、西村雅彦さんにあの決断をさせたんじゃないだろうかと穿った見方をしちゃうくらい印象に残りました。ただ、相方は全く残らなかったそうですが…。

 最後に毒吐きますが…。
 三谷幸喜は自分の作品を見に来る客のレベルを、高く見積もり過ぎじゃないか????もっと下世話だったり解りやすかったり愉快だったりを好きな人の割合が、高い気がするぞ!!
(↑自身を高い棚にあげた発言なのは、百も承知!!)

<追記>
 この5日後に二回目行きました。その感想は別項で。