2004年9月27日月曜日

新選組!38話【ある隊士の切腹】感想

 感想...。感想...。
 
 ただただ呆然とするばかりで、個々の場面については色々はあるものの、全体についての纏った感想は思い浮かびませんでした。これなら【友の死】の方がよっぽど感情の整理がついたよ...と思わずにはいられません。

 その原因はきっと、余りにも河合の「死(=切腹)」に至るまでの過程が理不尽だし哀れだったことかと。
 山南さんの時は、切腹までの経過が「個」として、或いは「組織(=法度)」としてもその意識が合致していた。言い換えれば、「個の意思(意識)」が「組織の倫理」を作り上げる過程を見た気すらしました。そして、個と組織が(強引ではあるけれど)「理に適って」た有様を見せていたので、整理できたんです(感情的にはボロボロでしたが)。

 【追記:周囲が彼等の死を「理不尽だ」と感じているのは同じなんです。誰も納得してないのも同じ。ただ山南さんの場合は、彼の裡だけでは「死=切腹」は理に適ったものとして納得し、達観していた。それが、法度の精神と最終的に寄り添い、法度そのものを「唯一無二」にさせた。そういう「理屈」で考えられそうなものが彼の死にはあったと思うんです...。ごちゃごちゃとすみません】

 けれど、河合の死には「法度」の歪みや、個と組織が寄り添えない現実をあからさまに見せ付けれらたかのようでした。放映中ずっと「何で?何で?」が離れることは無く、視聴後もそれは残っています。確かに、河合の「様」は土方が求める「士道」とは違ったと思うんです。そして、土方が「職務を疎かにした」という意味も理解できます。更に言えば「山南の死が無駄になる」そこも(解りたくないけど)解るんです。また、河合自身が「飛脚を待つ」「河合耆三郎は何一つ恥じることはしておりません」と言うのも理解できるし、尤もだと思う。
 全員の言動なんかは解り易いほど解るんです。正しいとも思うんです。けど、土方に対しても河合に対しても「それは違う...」とか「なんで?」と思うんです。
 そして、原因となった武田に対しては、不思議なことに「厭なやつ、卑怯なやつ」とは思えませんでした。それどころか、土方より河合よりもより「自分はこっちに近い」とすら思えてしまって(苦笑)。「哀れ」を感じこそすれ、腹立ちはなかったです。
 武田は彼なりの(ブレない)価値観で動いてるから。そこに、虚栄心が目立ったりや卑怯なやり方ではあるにせよ、「組織」「自分」のためという目的が明瞭だから、その一点で「誠」があると思うから、憎みきれないのかも知れません。

 ただ、誰かが(法度で)逝く度に、土方は静かに深く傷ついて己を責めてるんだろうなと思うと、本当に辛い。
 そして、山南さんの死が土方にとって外せない枷となってしまったんだと思うと、本当にどうして??と山南さんを責めたい気分になりました。あの人が居てくれたら、もっと違った形で土方も組も成長しえたかもしれないのに、本当に悔しい(←結局山南さん好きの戯言になるあたり、駄目駄目ですねぇ)。

 転じて、今回見事な対比だなと思ったのが沖田と斎藤でした。
 組で人と関係を築く事によって、感情が生まれ「人」に変わろうとしてる斎藤。
 生の短さを自覚したが故に、「人」としての感情を(無理矢理)殺して土方や近藤の役立つ「モノ」になろうとする沖田。
 介錯のしくじりの際、二人の動きが余りにも対照的に描かれていたと思います。僅かですが動きを躊躇い、戸惑った表情を見せた斎藤。斎藤より早く動き、無表情に河合を楽にしてやった沖田(何もできなかった平助も居ますが)。これまでとは違った二人が確かに其処に居ました。
 この二人は、一度もすれ違うことなく真逆の道を歩んだんじゃないかと思ったりしました。

 以下思いつく場面(人)に対する雑感を箇条書きで。

○寺田屋事件
・OPにこれをもってくる辺り、ある意味贅沢な作りだなと思いました。そして、そうかこの大河は「新選組」が主題だったんだと、再認識しました(この2回ばかりは、倒幕派に目移りしてたので/苦笑)。それにしても、拳銃を楽しそうに撃ちはなつ竜馬の男前なこと(笑)
・お登勢さんの交渉術と肝の据わり方は、なんなんでしょう?!。以前から好きな女性ではありましたが、戸田さん効果で益々好きになりましたよ(笑)
・お龍の例の有名な場面、NHKどう扱うのか?!と思ってましたが、綺麗に処理したな~と変に感心してました。麻生さんのサバサバ感が良い感じで。
・捨助…お前かよっ。この発端は(--;;。伏見奉行所もエライ者抱えたな~と同情してみたり(苦笑)

○河合と武田
・この身長差は一体(笑)
・八嶋と大倉二人っきりの場面は、本当に「歴史ある大河」の場面とは思いませんでしたよ(大好きさっ二人とも)。
・見たいと思ってた「チーム三谷・動きが五月蝿い二人」の競演がこんな時に適うとは(涙)。確かに、この二人が一緒だと五月蝿いし濃い、と思ってしまいました(笑)
・ただ、「五月蝿さ」の軍配は僅差で八嶋に挙がるかと(どんな勝負やねん/苦笑)
・色んな意味で癒されました。有難うです。
・二人とも、底力のある役者さんだと改めて認識しました。
・河合の不断さ優しさ実直さ、武田の狡さ向上心。それらは、人なら誰しも持ってる部分で良くすると「美点」にすらなるのに。それが「弱さに」になったことに哀しさを覚えました。
・土方の凄烈さ、沖田の達観と対峙した時は弱いかもしれませんが、彼等が持つ「誠」は弱くも無く嘘でもなかったと強く感じました。

○斎藤 あれこれ
・かつては「人を切るのは、飯を食うのと一緒だ」と言い放ったのに。山南さんの切腹以来どんどん感情が生まれて、「人」になっていく斎藤は本当に「綺麗な」子なんだと思います。
・大切な人を失う怖さを知って、人を斬る怖さを覚えたんだろうと思うと。
・斎藤の眼に今の土方はどう映るんだろうか。
・ただ、感情が生まれてくるにつれ「これまで」が余計辛くなるだろうな…
・「河合を喜んで介錯するやつなんて居ない」と「近藤さんにできることなら、あんたでもできる」は、土方にとっちゃぁ厳しい言葉だったろうに。それを言った斎藤も辛かったろうなぁ(土方を信じてるから言えた言葉だと思うから)

○土方と源さん
・土方に関しては、これ以上は頑張らなくて良いから、充分だから、とどれほど言いたいことか。
・傷ついて、その傷に蓋をして、それでもじくじくと痛む傷を抱えて、そこに気づかないよう自分を騙して。そういった意味で、土方は修羅の道を迷わず進んでると思います。
・辛いと言えない、逃げたい止めたいと言えない道を必死で歩いてる姿が痛々しいです。その退路を断ったのは、彼自身であり山南さんであり、近藤だと思うんですよ。この3人は本当にどうしようもなく大馬鹿者達だと。
・源さんが一番「鬼」になったと思う昨今。土方に寄り添えたり、気持ちを汲めるのは同じ「鬼」になった源さんだけだと思います。
・けれど、土方が必死になって「人」である事を捨てようとしてるけど、源さんは「人」でありながら「鬼」になったのかと。そっちの方が、より怖いし強いと思うのです。
・土方の「かっちゃん.....」と柱に頭をぶつける姿は、捨てきれない「本来の柔らかさ」で。それを見たり聞いたりする度無理してる事や、彼の限界(=いっぱいいっぱいさ)を感じてしまって、やりきれなくなります。
・昨日の土方を見て、何かで弾かれたら瞬間に切れてしまいそうな糸が思い浮かびました。
・「それは俺の役割じゃない」。確かにそうなんです。けど、役割なんてどうにでも後付の理由が成立するでしょうよ。何を原理原則論だけで動いてるの?!と腹立たしくなりました。反面、そう言わざるを得ない土方の心象が辛くてなりません。
・土方の幼さ(幼い言動を含む)が余りにも哀れでなりませんでした。
○沖田
・藤原沖田に完敗です(T^T)
・「あと5年で良いんです」には、涙腺やられました。なんて、透明で綺麗で凄みのある佇まいと声と表情をするんだろう…
・「命を粗末にする人には同情できないんだ」沖田の我侭であり、悲鳴でしょうね。
・苛立ちをぶつけられるのが孝庵先生ただ一人なのが、悲しいです。今の土方では沖田は受け止めきれないし…近藤も無理だろうなぁ
・孝庵先生とのコンビは最高かと(違)
○河合の死
・平助が平助がっ
・ここまで切腹をきっちり描くって...。三谷さんは人の死を等閑にしたくないんだと、痛感しました。
・河合の「飛脚は・・・・・まだですか・・・・・」。あぁ河合は最後まで信じる物があったんだと。
・河合から目を逸らす武田があまりにも辛くてなりませんでした。彼はこれが「重荷」になっていくんだろうと。
・谷長兄に関しては、救いがないのでコメント無しで(苦笑)
・飛脚の鈴音があれ程哀惜を帯びたものとは…

○その他
・西本と河合 この二人は、やはり高杉と俊ちゃんなんですよ(『彦馬が行く』見直しました/馬鹿)
・それでも、まったく違う雰囲気のお二方は流石です。良い役者さんたち揃えたよな、悔しくなるくらい。
・香取近藤の器がドンドン大きくなってる気がします。当初期待通り(一時諦めかけましたが)、大化けてしてくれそうな予感が漸くしてきました。
香取に関しては今からが楽しみでワクワクしております。
・佐藤B作さんが出てきた途端、胡散臭い空気になるのは流石かと(笑)
・伊東さんってなんとも掴み所の無いお人ですこと(誉めてます)。