2005年5月9日月曜日

金曜エンタ 『いつか来る日のために』

 訪問看護士と末期患者とその家族を描いたドラマ。
 見終わった後感じた事は、流石山田太一。後味が良く、尚且つ見るものに何か残すドラマだわ、というのが率直な感想です。

 この後味のよさは恐らく、主演の市原悦子女史の力に拠るところが大きいと、そう感じました。
 本来ならもっと湿っぽくできる(なる)であろう部分が、さらっと、しかも彼女が背負っているであろう「苦悩」や被介護者と介護士、そして取り巻く家族の温度の僅かな違いや、取り巻く現実との「折り合い」(って表現で正しいのか、不安)をも感じさせられたことで、その湿っぽさが薄らいだと。そのため、こういったドラマが苦手な私でも十分最後まで見続けられたし、タイトルの通り「いつか来る日」を思わずにはいられませんでした。

 また、残された「生」への執着を、醜さと清らかと併せて見せたのは凄いな、と思った次第でした。
 家族も患者も各々「残り少ない『生』」へ執着してるんだけれど、その執着が「単に生き延びる」ことや、これでまで築いてきた「過去」への執着だったものが、ある時期「それらの『過去』をも含め、残された生を生きる」事に変わる瞬間の力強さ、人が持つ生命への信頼感なんかを感じさせられた気がしました。
(しかし、若い子が病にしろ事故にしろ命を落す場面ってのは、例えドラマであってもどうも苦手です/^^;;)

 ところで、このドラマで一番寄り添えたのが実は、神山繁さん&中原ひとみさんが演じておられたご夫妻でした。特に夫が亡くなったと思った瞬間開放感に包まれた、と介護士に告白する場面はどうにも現実的でした。夫も妻のそんな空気を薄っすらと感じ取ってるけれど、お互いに口にせず時をやり過ごてる・・・きっとどんな夫婦にもある日常だろうし、感情なんじゃないかと。だから最後に妻が夫に「嘘」を語る場面は、妻がその心境に思い至るまでの葛藤なんかを思うと、計り知れないものがあるよな・・・と何故かしらずしん重いものが当たった気がしました。

 しかしながら、やはり描かれている「状況」は幸せな状況としか思えない部分もあり、現実はこんなものじゃないだろうと自棄に醒めた目で見たのも事実です。
 というのは、自宅介護を受け入れられるかどうかっていうのは、家庭環境や経済状況に拠る部分がどうしても大きいと思うんです。どうしたって、家族(特に女性)に肉体的にも精神的にも負担がかかるだろうし、家族関係も多少変化する。
 そして、周辺地域の介護施設や医療環境も勿論重要だし。果たして医者不足な地域で、ああいう形の手厚い看護は可能なのか??とか。そんな事を思いながら見ておりました。確かに自宅療養(介護)の意義や患者の精神に与える有効性は理解しますが、転じて己の立場に振り替えてみると、果たして諸手を挙げて両親(実&相方)や相方を受け入れる事ができるんだろうか・・・と非常に複雑な心境になりました。

 出演者が被っていた所為か、『お父さんの恋』で自宅介護を受け入れる前の家族の姿、今回のドラマで受け入れた後の家族の姿がある一例ですが見せてもらえた気がしました。しかし惜しむらくは・・・もっと深い葛藤を見せてもらいたかった。表面的なことではなく、一訪問看護士や医師が接した家族の何かを突っ込んで見たかったと。

 さてそんなまじめ(なのか??)な話はここまでにして、以下色眼鏡で見た雑感です(笑)

堺さん目的で見たドラマ(ヲイ)でしたが、十分満足いたしました。眼鏡の黒川医師、シックな装いも十分文句無しならば、頼りなさげな(しかも嫁父に主導権握られてそうな辺りとか/笑)、押しの強さや体力があまり感じられない風情が最高でした(って)。また、どんな作品に出演されても、役割に応じた存在感、雰囲気を見せてくれる役者さんだと再認識させていただきました。

 しかし、堺さんは勿論ですが、以外にも突っ込んでみたくなった場面がありました(ごめんなさい)。
・黒川医師がちゃりんこに乗ってる場面では、「おぉちゃんと乗れたんや!!少し怪しい気配は漂ってるけれど・・・。乗れないと思ってすみません」と。
・上野樹里ちゃんを横浜に連れてく場面。ロケ中車酔いは大丈夫だったんだろうか??樹里ちゃんや市原さん達にご迷惑かけたんじゃないだろうか?とやたらヒヤヒヤ(余計なお世話/^^;;)
・黒川医師の非力さには「やっぱり・・・」と妙に脱力いたしました(笑)
・経験豊富な介護士に弱みと主導権を握られまくってる黒川医師が情けないのか、可愛いのか。途中でちょっと悩みました(って)
・黒川医師の奥様はある意味苦労だな、とふと思ったり(笑)
・上野樹里ちゃんは巧いな〜と。ただ・・・健康的に見える顔立ちだから最期の場面はちと違和感がございました。
・市原悦子さんが夫に向けた苛々は・・・大変よ〜く理解できます(笑)。
だって、休日の相方もあんな感じで終日ゴロゴロしてるし、その姿見てると何で?!と思う事が度々あるので(介護士さんの仕事量や精神的な疲れとは雲泥の差なんですが。それでも苛々するんだから、ああいうお仕事されてたら余計だろうな、と思う次第です)。
・星野さんの台詞回しがやらた一本調子で気になって仕方なかった。一生懸命だったり切羽詰まった雰囲気は良いな〜と思うんだけど、周囲が巧い人が多い分どうしても気になりました(^^;;
・あんだけ色々な事盛り込む必要があったのか??もっと視点を一つにすべきだったんじゃないのか??と思わなくも無く。特に、ゆきの妊娠騒動は物凄く要らなかったと思ったり(中途半端だったし)。確かに「生と死」の対比が欲しかったという意図は何となく理解しますが、あの挿話があったが故に看護の場面が薄くなった気がしなくもないです。