12人の陪審員と共に、刺激のあるとても心地よい時間を過すことができました。また、劇場を出る時に良い意味で何も残らず、ただ「楽しかった」とか「良いお芝居だった」という幸福感が残る、そんな素敵な舞台だったと思います。
そして、この舞台の印象を一言で言うならば、「生瀬さんの魅力全開&一人勝ち」でした(どんなやねん)。この辺りの詳細は後ほど思うぞ分語りたいと思います。
Wowow『検証・三谷幸喜』内にて三谷さんがおっしゃっておられた様に、確かに唯一人の突っ込みである陪審員2号@生瀬さんVS最強のボケ11人という見事な構図でした。中でも、陪審員4号@筒井道隆氏と陪審員10号@堀内敬子氏のボケ具合は最高に素晴しく、この二人への陪審員2号の突っ込みは徹底的に容赦が無く、その様には清々しささえ覚えた程でした(笑)。
更に役割的に「ボケ」とは思われない陪審員9号@小日向文世氏でしたが、見事というか...予想通りというか...何と言うかある意味最強でございました(これについても後述したい/笑)。
話に関して少しだけ触れておきたいと思います。
無罪か有罪か。当初、単なる感情論から始まった議論とも言えない議論が、最後には小さな、しかしだからこそ大切な違和感を「言葉」で説明し、一つの結論が導き出される過程。特に、後半の議論が新たな展開を迎え、収束に向かう時のなんとも言えないスピード感は素晴しいと思います。そして、終始交わされる言葉の応酬だけで12人の個性(や背景)が見える作りに、「あぁ流石三谷さんだ」となんとも言えない心地よさを覚えるお芝居でした。
余談ですが、個人の抱えてる問題と「今」向き合わなくてはならない問題とを混同することの悲しさや醜さなんかも感じて。この部分、うっ...気をつけようと反省しました(って)。
また、13人目の陪審員としてどういう判断を下すのか。正直言って観ている間、揺れ続けてましたがやっぱり、付和雷同しちゃうんだろうと思います。どっかで、「『罪』を科してしまって、もしかして恨まれたどうしよう」とか「『いい人(慈悲深い人)』と皆に思われたい」とか、そんな事を思ってしまいそうで。けれど、「『罪』は『罪』だし...」とか感情的な部分で右往左往するんじゃないかと。
やっぱり、平均的日本人で、確かにこういう風土で陪審員制度の導入は時期尚早なんじゃないだろうかと思った次第です。もう少し「論理的に考える」とか「『論理』と『感情』の同居させ方、使い分け方」といった部分をきちんと教育で訓練した方が良いんじゃないだろうか、と教育問題に逃げてみます(苦笑)。
実は、今回幸運にも2週間前と今週半ばの2回鑑賞することができました。しかも1回は最前列ど真ん中と、今年(いや今年度か)の運使い切りと言っても良い程のミーハー的に(笑)美味しい席で見ることがでました。
2回鑑賞して初めて、「舞台は日々変化する」を体感したような気がしています。確かに、東京公演半で映像化しているDVDと、公演後半になりがちな大阪の劇場で観た時とは、若干変わっているとは感じていたんです。ただその時は、大阪と東京では意図的に演出を変化させてるんだろうな〜と思っていたんですが、大間違いでした。たった2週間の短い期間で「変化」するんですね。どこがとは明確には判りませんが、恐らく会話のテンポとか、役者さん雰囲気とか、細かな仕草とかが少しずつ変化してたように思います。それでいて、舞台の完成度は全く変化しないってのは!!全く「凄い」とかしか言葉がありませんでした。お陰で、これまで観た舞台(特に『オケピ!2003』)も、無理をしてでも複数回観ておくべきだった!!と今更ながらの後悔をいたしました(ホント今更)。
あらすじや全体の雰囲気等々については詳細かつ丁寧なレビューが上がってるので、以下ネタバレなミーハー的雑感です。
私は映画版を観ていたので、あらすじ及び登場人物の性格付け、行動等々は知っている状態でした。なので、あの陪審員が今回の役者でどう変わるのか、その結果舞台全体がどう変化するのかがかなり楽しみでした。
初回鑑賞後は、良くも悪くも若干の「違和感」がありました。その違和感なるものが何を起因としているのかは、未だに分析できていません。が、「違和感の理由」だと思われる一つとして、陪審員11号が過去に演じた「役」についてです。映画版では「弁護士の役」で、今回は「陪審員の役」となっていました。どういった意図で脚本が変更されたのかは不明ですが(三谷さんのことなので、きっと何か深い意図があるに違いない筈)、11号の役割を考えた場合「弁護士」の方がよりストンと落ちるように思えてなりませんでした。(だって、「陪審員の役」をやった役者が「弁護士」ですと言い、延々それらしく振舞ってる背景が見えないように思えて)。
他は、陪審員7号@温水洋一氏の小さな(笑)椅子の扱いかな。円形テーブルを使用している舞台なので、普通の椅子では体が被るから小さな椅子にしたんふだろうとは思うんです。が、その折角の設定が今ひとつ活かされてなかった様に感じました。まぁ7号の動きでそれとなく落ちは付いてまし、それ程気にする部分でないのかも知れないですが、あまりにも唐突で三谷さんらしく無いような気がした部分でした。
2回目は上記以外の違和感は薄れたように感じました。恐らく席が近かったお陰で、役者さんの細かい表情とか小さな台詞等を掴むことができたからだと思います。
正直、初回は見るのに疲れました(苦笑)。理由は、簡単です。魅力的な人が多すぎ(笑)。
後方席でいくら全体が見渡せるからといっても、12人全員の動きを追うのは流石に無理がありました。しかも、皆さん喋ってない時も当然「役」として動いておられ、そっちも気になるしとかなり視線が右往左往してしまう。
2回目は、最前列だったが故に最初から全体を見ることは諦め(ってか見えないし)、陪審員2号&4号&8号@鈴木砂羽氏&9号&12号@山寺宏一氏の6名を追いかける作戦にでました。そのお陰で、視線は迷うことなく予想以上に楽に見ることが出来たように思います。ある程度、流れや動きを知っていたからだと思うと、初回のしんどさも有難さに変わりました。
この舞台、ご存知の様に色んな分野から役者さんが集まってます。そんな中で思ったことは、「やっぱり舞台を続けておられる方は、舞台で輝くんだよな〜」という当たり前な事でした。目玉の一つであり一人格好良い(笑)陪審員11号以上に目を引いたのが、生瀬さんでした。そして、舞台を経験されてる方の動きは本当にキレがあり、また、立っているだけの時でも全身に神経を使われてることが分りました。特にカーテンコール時に強く感じてしまいました、です。
というのは、初回鑑賞時気になったのが11号。腕がブラブラしていて申し訳ないけれど「汚い姿」だと感じてしまいました。確かに、生瀬さんや小日向さん達と比べるのは申し訳ないと思うんですが。それを見て思い出したのが、随分前にどこかの番組内(木梨さんがホストで三谷さんと天海さんがゲストで出ておられた番組)で天海祐希さんが言われた言葉。古い記憶なので不確かだとは思いますが、「(舞台に戻るのは)ドラマだとカメラに写る部分だけお芝居をしてしまい、それ以外は弛緩してしまう。けれど舞台では全身を使ってお芝居をする。そういった緊張感をもってドラマでもお芝居をしたいし、その緊張感を忘れないように」と言う様な事だったと思います。その時は「ふ〜ん。流石舞台出身の方やな...」という感想しかなかったんですが、今回改めて彼女が言っていた事が具体的に見えた気がしたんです。11号の方が悪いという意味ではなく、舞台とカメラの前のお芝居は似てるようで全く違うものなんだと。ただ、2回目の時はそれ程気にならなかったのでやっぱり「慣れ」なんだろう〜と思います。
あと、声の通りが違いました(苦笑)。この面で11号は違和感無かったんですが、5号の方が。声の通りが悪いというか、一部聞き取り難いと感じたのも事実。いや、他の方達が通り過ぎってのも十分あるんですがね(特に生瀬さん/笑)。
各陪審員について雑感。
○1号@浅野和之氏
体の柔らかさに吃驚(笑)でした。
何があってもブレない方で、安心して観てられる方でした。特に小日向さんが台詞を間違った時に、慌てずフォローをされてたのには「凄い」の言葉しかありませんでした。
この方の声は聞きやすい上、私の好みです(って)
○2号@生瀬勝久氏
お疲れ様です、としか言いようがない(笑)
2時間強のうちほぼ2/3は2号が喋ってるんじゃないでしょうか???その上、11人全員にツッコマナあかんしホント大変だったと思います、です。とは言え、生瀬さんの突っ込みは素晴しく冴えわたっておられましたよ!!しかも、安定感あるし、声は鬼のように通るし、素晴しかったです(贅沢なことですが、!最前列であの声は流石に「大きすぎ」た^^;;;)。
やっぱり舞台では一番格好良くて目が離せませんでした。どんな時でも「2号」として存在されていて、不安そうな表情とか、9号に梯子を外れた時の何とも表現できない表情とか、激昂した時に見せる「駄目男」さとかは、流石生瀬さん!!でした。
2号の奥さんが離れた理由とか、彼の日常の立場とかそういった部分が何気無い仕草とか言い回しで見えて、説得力のあるお芝居ってこういう事なんだと思った次第です。
なのに、カーテンコールでは11号に完全に負けてた2号(笑)
2回目鑑賞時の最終カーテンコールの事。ウィンクとちょっと格好良い仕草でお嬢さん達黄色い歓声(悲鳴/笑)を独り占めした11号。それに気づいた2号の悔しそうな表情と、投げKISSをしてちょっと少なめな黄色い歓声を浴びた時の満足そうな表情は、きっと忘れないと思います(そして、今後彼を見るたびに思い出し笑いする筈)。そんな負けず嫌いな生瀬さんが大好きですよ!!
近くで見た生瀬さんは、細いし髪の毛さらさらだし、ちょっと艶があるし、でドキドキでした。
○3号@伊藤正之氏
毎回毎回「プリン・ア・ラ・モード」食されてるんでしょうね....それもそれで大変かと(苦笑)
『BN☆GT』のホテル従業員さんも、パニックに弱い役だったので、是非他のお芝居を拝見したいと思いました。
○4号@筒井道隆氏
役はどうやらガテン系だったらしいですが、どう見ても「良いとこの坊ちゃんが、社会勉強の為ちょっと無理して体力仕事をしてる」にしか見えないのは私の目が濁ってるからなんでしょうか??
えっと、筒井君の無精髭を見て一瞬「どきどき」したのは何故???もしかして気づかないうちに筒井君のファンになったのか、私?!と妙に動揺してました。
11人中で最強のボケは4号だと信じて疑いません。だって、言動全てが素ボケで可笑しいんですが(その上可愛らしさがあるって!!)。なので、生瀬さんとの絡みは素晴しく素敵でした。生瀬さんもイキイキ突っ込んでたし(笑)
ただね、台詞が無い時に視線が落ち着かないってのはどうよ、と思うんですが、そこも筒井君らしくて良いか思わせる人徳が彼にはあるような気がします。あと、せめて4号くらいは6号とハイタッチしてあげようよ。容保様の為に尽くしてたじゃないよ秋月様は〜とジタバタしたくなりました(馬鹿)。
○5号@石田・ゆり子氏
流石に綺麗でございました。
必死で笑いを堪えてる様子が印象的でございました。もしかすると、一番素で受けてたの彼女かもしれません。
○6号@堀部圭亮氏
秋月様っ!!な雰囲気は当然ながら全く無く、ちょっと寂しい思いもしましたが(っておい)、メリハリの利いた感じのお芝居、好きです。
ただ、4号との絡みがあまり無かったのは寂しいかった次第です(しつこい)。
○7号@温水洋一氏
初っ端の笑いを掻っ攫う7号。その後も、言動で笑いを掻っ攫ってくれ、ある意味生瀬さん以上に激しい役立ったと思われます。
しかし、そんなことよりないより衝撃的だったのは、「ランニング姿」を目の前で見たことです(笑)。金鎖のネックレスしてたのね〜と思わず見入った最前列(字余り??)。
○8号@鈴木砂羽氏
本当に綺麗で可愛らしくてスタイル良くて、可笑しくて!!もう砂羽さん大好き!!!と叫びたくなりました(迷惑です)。
恐らく女性陣で一番動いて台詞も多いんじゃないかと思われるんですが、飄々と丁寧に可愛らしく素敵に演じておられました。2回目の時台詞を噛んだ(珍しいのかな??)後、素で周辺の皆に片手拝みで謝っておられた様子が誠に愛らしゅうございました。
陪審員で一番親近感を抱いたのが、実は8号でした。あの大勢に流されやすい所が特に。映画版では世間知らずっぽい、浮世離れした感じだったのがものすごく何処にでも居そうな女性に変更してたのが、印象的でありました。
○9号@小日向文世氏
12人中一番理性的で論理的な役。小日向さんの持っておられる抽斗の多さを感じました。この方が難しい台詞を喋ると場の緊張感が高まるというか、水を打ったように静まり返る気がします。たった一人で場を変えられるって凄いですよ、ホント。
とは言え小日向さんです。期待(?!)は裏切ってくれません。
初回の事なんですが、9号が議論を続ける為だけに「無罪」を「有罪」に変え有罪である根拠を説明する。その説明を聞いた5号が有罪に変更すると、議論を続ける理由が出来たので9号は元来の主張であった無罪に再変更する、場面。本来なら「無罪」と言わなくてはいけないのに、「有罪」と思わず言った9号。その後、9号が「有罪....無罪」と素で忘れた様な雰囲気が漂い、他11人の戸惑いが一瞬見えました(笑)。がそれ程度間は空かず、1号が「どっちなんです?」と向けて9号が「無罪です」と言い、元の流れに戻りました。が、やっぱり小日向さんの素ボケは最強だわ、や、期待は裏切ってくれないわ、等々なんとも失礼な事を思った次第です(笑)。
2回目は何事も無かったんですが、その場面の前に妙な空気があったのできっと小日向さんはあの場面苦手なんだろうなと思います、です。28日の生放送頑張って下さい、と言ってみます。
あと、終始微笑を浮かべておられたのは演技なのか、素なのか。ものすごい気になりました(笑)
○10号@堀内敬子氏
うろたえ方や佇まいがそれは可愛らしくて。大好きになってしまいました。4号とのWボケコンビも素敵だったし(笑)
劇団・四季のご出身だそうですが、流石に声の通りも、括舌も良くて本当に聞き易かったです。
この方の、ベル(『美女と野獣』)はきっと素敵だったろうな〜と思いました。
○11号@江口・洋介氏
素で格好良かったです(笑)。特にカーテンコールはこの方の為だけにあるといっても良いかと。
1回目観た時よりも2回目の方がしっくり馴染んできた所為か、ゆとりを持って生き生きと演じられていたように思います。その所為か、2回目の方が本来の魅力が出て、格好良く感じました(偉そう)。古畑の物真似を2回目に観た時に、あぁ舞台上で遊ぶゆとりが出てきたんだな〜と。実際、微妙に似てたし会場も受けてました。
実は、そういった一番変化を感じたのがこの方だったんですよね。それだけ吸収されて、表現できる力のある役者さんなんだな〜と思いました。
カーテンコール時、あまりの近さとその格好良さに思わず「携帯写真撮れる距離やん!!つうか撮りたい!!」と思った程。なんか一人だけ放ってる光が違いました。あぁ吃驚(笑)
○12号@山寺宏一氏
あの「トリさん(By『魔神英雄伝・ワタル』)」だった山寺さんが、こんなに...、と妙に感慨深くなりました(笑)。実は山寺氏の声優初期を知ってたりします、私...。20年以上も前の話ですがね(と遠い目をしてみる)。
そんな古い話はさて置き、遜色ないお芝居に驚きました。声も申し分なく通るし、台詞のテンポも素晴しく良い。ご本人が言っておられた動きも全く遜色無く、安心感のあるお芝居だったと思います、です。
音楽ついて一言。
劇中音楽は一切ありませんでした。その分、最後に流れるテーマ音楽が非常に印象的に感じました。その音楽は「古畑シリーズ」でお馴染みの本間勇輔さんだと知ったのは、初回公演後。決して華やかではないんですが、心地よい音楽です。もしかしたら後日CD買うかもしれません。
パンフレットについて少しだけ。
今回劇場で購入したのは、パンフレットのみでした。カレンダーを買おうかと思ったんですが、これ以上職場にも自宅にも置けないと思い買いませんでした(へたれ)。
パンフレットで秀逸なのは、出演者と法務省の方との陪審員導入に関するQ&Aです。小日向さんと山寺さんの質問が素晴しく可笑しいので、明日明後日行かれる方は是非ご覧になって下さいませ。