2005年2月22日火曜日

義母と本。

 先日、帰省した際に突然義母から「お勧めの本教えて欲しいねん」と言われ、非常に悩みました。
 と言うのは、義母は今まで「本」というものを一切読んだことが無く、今まで興味すらなかったのという事もあるんですが、それより何より前述の言葉が出た契機がなんとなく分かるだけに、無碍にもできないし、というなんとも曖昧模糊とした理由なんです。
 実は、義父が無類の本好きで、帰省すると大概私と「最近読んだ本」とか「過去に読んだ本」で盛り上がるんです。義母はそれがどうにも悔しかったり、羨ましかったりするみたいです(^^;;(恐らく義母はおとうさんと私に対して同時に「ずるいっ。私も話したいのに!!」というなんとも幸せな嫉妬があるようで、微笑ましくて。余計に無下にできないんです^^;;)

 相方に相談したら「星新一のショートショートが良いかもな〜」と予想外の答えが返ってきました。ってか、私も好きなんで一瞬考えなくは無かったんですよ。が、流石に義母にSFのショートショートは薦められん、と却下いたしました(いきなりSFってのはどうかと思うので^^;;)。そして、義父にも相談したら「何でもええよ」と逃げられました。
 本屋で相談したら(迷惑です)「藤沢周平なんかお勧めですよ」と云われたものの、実は私が彼の作品を未読なためどうにも判断できず(- -;;;

 考えた挙句のお勧め本条件は、次のようなものでした。
1.短編集(初めて読むのに長編は辛かろう、との判断)
2.文章ができるだけ柔らかく、読みやすいこと
3.専門的な話じゃないこと
4.あまり分厚くないこと(できるだけ薄い)
5.私が一読したことがある本。
6.連続ドラマ好きな義母に馴染みやすい世界であること。
で、それを鑑みた結果
宮部みゆき著『本所深川ふしぎ草子
北村薫著『空飛ぶ馬
の2冊と相成りました。

 当初から宮部みゆきの時代物は選択肢には入ってたんです。やっぱり彼女の文体は読みやすいし、シンプルで取っ付き易いと感じるので。しかも物語自体、シンプルなんだれど勢いがあって一篇単位だったら勢いで読めるだろうし、また、『本所深川〜』は確か「金曜時代劇」にもなってた筈で、それならばドラマ好きな義母にはとっつき易いかとも思ったので。
 実は、宮部の時代物は今まで読んだことが無かったので(条件.5はどうした/笑)、義母に渡す前に読んでみました(ヲイ)。やっぱりサクサク読めるし、人間の機微を描いたら宮部は巧いよな、と納得することしきり。ただ、宮部みゆきでこの分量は物足りませんでした(苦笑)。

 そして、義母に一番読んでもらいたいのが実は北村薫氏の「円紫さんと私」シリーズなんですよ(笑)。私自身がこの方の文章大好きなんです。流麗で柔らかな語り口はまるで水彩画のようなのに、時折深く濃い染みが在る。その染みは確かに醜いかもしれないけれど、「醜い」からと言って排除するのではなく「何処にもあるかもしれない」と言う目であるがままに見つめてる。そんな事をゆっくり静かに語りかけてくれる、そんなシリーズだと思うんです。このシリーズ短編集にも関わらず、奥深く染み渡る作品だと思うんです(『秋の花』や[[『六の宮の姫君』は長編ですが^^;;)。
 そして、何よりシリーズを通じて「私」が成長していく過程や、円紫さんのやわらかで穏やかな語り口が心地よく、読後も静かに幸せな気持ちになれる作品達だと感じてます。
 また、北村さんなら時の三部作や『盤上の敵』>も良いと思うんですが、何せ何れも長編なので最初に義母に薦めるには考えました(苦笑)。この本は繰り返し読んでるんですが、手放すのが惜しくて(笑)、新たに購入した分を包装して渡します。

 来月の帰省時に義母には渡すつもりなんですが、どんな感想を抱かれるのかが大変興味があります(笑)初めて本を読んだ方の感想って思いもかけない視点があって、かなり楽しく感じます。
(といいつつ2冊とも義父の本棚直行かとも思ってます/苦笑)