2004年10月26日火曜日

新選組!42話【竜馬暗殺】感想

 『絡新婦の理』の京極堂の台詞では無いですが、全てにおいて「場」と「流れ」が変わり、「江戸」という時代が終わったと感じた回でした。また、時代を作る側と時代に消された側の強さと弱さ、立脚点の違い等が更に明確になったのではないかと。(国を動かす為に「施政者」になろうとする者と、自らの組織なり内にしか「視点」の無いもの違いというか...何と言うか。難しいです...)
 それは「大政奉還」といった政の変化、坂本竜馬の死といった「歴史上」の大きな出来事だけでなく、
試衛館の面々、そして彼等の姿を借りた庶民の僅かばかりの「変化」や動揺も同時に描かれていたからだと思うのです。

以下雑感。

○大政奉還について。
 徳川慶喜の「名君」のイメージを悉く覆してしまうくらいの策士(腹黒)さに、何時の時代にも変らないであろう「為政者としての地位」や「権力」の魔力とそれに対する人の執着を見た気がしました。
 徳川慶喜のみならず、西郷・岩倉の会談を見るにつけ結局、倒幕側であろうと旧幕府であろうと「頭になって思い通りに国を動かしたい」「時代を創りたい」という根底にある欲望は大差ないんだと、決して綺麗事では語れない「政」と「歴史」を感じたりしました。
(西郷さんも慶喜公も大河の題材になってるけど、もっと清廉なイメージだったもんなぁ。描き方見方を変えることで、こうも生臭く奥深くなるんだと、当り前のことを思ったり。)

○竜馬の死。
 一時代が終焉した、そう意識させられたのは「新選組」と平行する者して竜馬を描いた結果だと思います。平行する彼等を同時に見せ、しかも微かに交わらせた事で「幕末」の思想やうねりを描き出したからだと。
 当初、確かに「竜馬と近藤が知り合いって設定、どうまとめるんや?!」と思ってました。が、その初期設定が無理なくちゃんと活かされた事に三谷幸喜の才能に驚くばかりです(途中嫌になった事もありましたが)。
 そして、竜馬殺害の犯人(?!)が見廻組(というか佐々木只三郎なんですが)なのも無理がなく、
しかも当時新選組が殺害したという風説の根拠である「こなくそ」という言葉も割合巧く使ったな〜と感心しました。
 また、新選組が「竜馬を救う」とかなり「無茶」な設定であるにも関らず、1話からの近藤との関係性と幕府高官である永井の憂慮を挿入することで違和感無く纏めたとも思います(確かに幕府側としては組織の弱体化を体感してる分、竜馬が生きてればと思ったろうとは思う人もいたであろうと納得できます)。
 
 何より、最期まで何処にも属さず「好き勝手」に生き、人を信じることで時代を生き、その時代に微笑まれた竜馬はやはり魅力的だと思います(思った以上に江口竜馬が良かったです。あの奔放さは素敵でした)。
 竜馬の台詞は、全てが良かったなと。中でも、「人を信じることが基本。その人が裏切ったら自分の見る目が無かったって事」や「馬鹿話で一生過ごしたい」って台詞は、本当に江口竜馬らしいというか、彼の魅力的「強さ」や「しなやかさ」の象徴の様に感じました。
 最期の「頭をやられた...」もそうですよね。彼は人間的魅力と己の才覚だけで、時代を動かしたんだと言う比喩なんですよね。やっぱ巧いよなぁ。

○新選組
・屯所の移動は、「直参になったから、間借ではなんですやろ」と如何にも京都人的な表現で、追い出されたと。恐らく寺側(京の人)は幕府の弱体化を肌で感じたからこその、出来事だったんじゃないでしょうか。しかし、その後ちゃんと寺側から建築費等々出させたのは土方の才覚の為せる技なんでしょうね。
・政権返上そのものを憂う近藤と、今後の財源を気にする土方。二人の「気質」なり、今まで組織を創り上げてきた役割や過程の差が出た場面だったかと。
(その場で窘める近藤を見て、非常に現実感覚の無い人物だと感じもじました)
・お孝(新しい人)に深雪(懐かしい人)の面影を重ねる近藤は、幕藩体制に寄り添おうとする「新選組」という組織の比喩かと、穿ってみたり。
・沖田は周平に己の「未来」を漸く託し始めたのかもしれないな、と。そして、周平も漸く「己」の居場所なり立位置を見つけ、それに背負って「生きる」決心がついたのかと。
若人二人の変化は、静かで透明感があって美しいとすら思いました。(特に藤原沖田の透明感ったら、言葉が見つかりません)
・お多福での新八、島田、左之の遣り取りは、恐らく当時の庶民が感じていたことなんだろうと思いました。上では「王政復古」と言う名で「仕組」変化させようとしてたり、それを阻止しようとしてる。しかし、庶民レベルでは「何も変わらない」という事だった。
しかし、不安や期待だけが煽られてるそんな状況だったんだろうな…と。
・新八と島田の「説明してくれる人がいたんだよな...」。お願いだから不意打ちは勘弁してください(涙)。小首傾け微笑しながら時勢を語るあの方が見えた気すらしました。
・近藤もご家老直々に密命を受けるまでになったんですよね、傾きかけた屋台といえど凄い出世だとは思います。そして、傾きかけた屋台を盲目的に支えようとする近藤の揺るぎない「誠」は、最後まで一貫するんでしょうね。
・平助の著しい成長。それは、非常に微笑ましくて嬉しい場面だったんです。が、伊東や近藤の下でも出なかった新たな芽だったことに、なんともいえないやり切れなさを覚えました。逆に竜馬が持つある種の影響力を感じすらしました。
 そして、平助の「あったであろう」未来が描かれる度に、切なくなります。彼と沖田だけは史実と違っても良いから、来年の桜も見てもらいと痛切に願うのです。
・平助の表情が伊東を前にすると途端に、硬くなるのが痛々しいです。それでも平助は伊東を「慕って」るのが分かるだけに、余計辛いです。
・兎にも角にも平助は、ややこしい人たちに振り回される立場なのは変わりなく(笑)
・斎藤は斎藤で、竜馬に揺さぶりを掛けられ戸惑うようになりましたね…彼は彼なりに己の未来を考えだしたんんだと。
・土方の「何で新選組が坂本を救わなきゃならないのか」は、視聴者の代弁かと思ったり。しかし、その後きっちり人選して配置する才覚は相変わらず冴えてるな、と。
・沖田の死期が近づいていく藤原の表現には、唸るしかなく。

○その他
・捨助は漸く己の判断で「信じるに足る相手」かどうかを見極め始めたんですね。それもこれも竜馬に信じてもらい、佐々木様に裏切られた経験からだと思うと。なんともかんとも(苦笑)
・左之のピンクな前掛け姿とアヤシイ店主っぷりに、客はきっと引いたに違い有りません(笑)。それにしても、やはりおまさちゃん尻に敷いてますね〜(あぁ可愛い過ぎですよ。この夫婦)
・竜馬が以蔵の話をした瞬間、竜馬の後ろに(一度も出てきたことの無い)以蔵の姿が見えた気がしました(汗)。なんなんだろう…この感覚
・回想場面が一切無いのに、過去の映像が思い出せるくらい創りこんでるドラマだと思います。
・今回、一番辛かったのは実は「予告」でした。こんなんで来週まともとに見ることができるのか不安です(苦笑)