2004年10月4日月曜日

新選組!39話【将軍 死す】 感想

 掬った水が指の隙間から漏れて行くような感じがした回でした。大切に扱って、漏れないようにしていた筈の水がゆっくりゆっくり漏れて行く過程を、これから見ていかなくっちゃならないのかと思うと本当に痛いです。

 恐らくこれが最後になるであろう「幸せな」試衛館時代を彷彿させる場面。
 沖田と山南さんが居ないことで、あれほど不安定感を醸し出すとは。本当に「人一人の居場所」って大きいんだと改めて感じました。三谷幸喜が描きたかったであろう「人が居なくなることの喪失感」は、こういうことだったのかと回を追うごとに強く思うようになりました
 そして、そこに居る人の佇まいが「あの頃」とは違った事、皆「あの頃」を懐かしみ、戻れない「今」を忘れるかの様な雰囲気が感じられ、それぞれ変わらざるを得なかった事象の大きさと、時間経過を感じされられました。
 正直、あの頃の彼等と比べて「今」彼等が得たものと喪ったものどちらが大きいんだろうか、と思わずには居られません。

 そして此処に来て、時代を動かした人間と、時代に翻弄された人間の違いが何処にあったのかよく解らなくなりました。時代(=歴史)を己が手で動かしたいと熱望し「時代」に微笑まれた人間と、同じく熱望したにも関らず素気無くされた人間の違いって何なんでしょう。
 一橋公の「余が時代を動かす」を聞いてそう、ふとそんな事を思いました。
後世から見たらその違いは「先見性の有無」とか色々言えるのでしょうが、もしかしたら単なる「時代」の気まぐれなのかもしれない、と思いました。

 以下雑感。

○沖田の焦燥感や苛立ち
 ・残された「生」への執着、「生きること」への渇望、目の前に迫った死への諦観等が綯交ぜになっている姿が痛々しくてなりませんでした。
・反面「死」見据えて「今」を急ぐように生きる姿が、透明感と凄みを増してどんどん鬼神さながらになっていく様には言葉すらありません。
・周平に対する「厳しさ」は、「生」と「継嗣」ということに対する「嫉妬」でなかったかと思います。もしかすると、それらは初めて自覚した己の「弱さ」や「醜さ」ではないでしょうか。
・沖田については、余りの変動に感想も何もあったもんじゃ無く。ただ、藤原沖田の圧倒的な存在感と、彼の映し出す光と闇のコントラストに引きこまれるばかりです。
・此処に来ての藤原竜也は物凄い表現力だと思います、本当に(『八墓村』は思いっきり手抜きしてたとしか思えない/酷)。

○源さん
・「優しさ」が際立って描かれていた回だったかと思います。
・正直、源さんは「変わった」とは思います。ただ、根っこの部分は何も失わないまま「変わった」のだと思うのです。やはりそれが一番深くて怖いと思うのは変わりなく。
・源さんもこれ以上、誰も「死なせたく」なかったんだと。死なせた事を悔いているのが痛々しい位伝わってきて。
・自分の裁量が許されるなら、誰一人失いたくなかったろうな、源さんは。
・葛山・河合の切腹に苦しんでいたのは、土方ばかりでは無かったと。土方を傍にいながらも止められなかった自身を悔いていたんだ、と思えてはいたけれども、それをこうやって見せられると哀しいです。
・源さんの強さとしたたかさ、そして何より「勇」への愛情が見えました。周平の処断をああすることで、勇が傷つくことをも防いだんだと。ご隠居の望む通りの「「お目付け役」だと思います。
・周平と浅野件を土方に告げなかったのは、源さん精一杯の抵抗だったんでしょう。そして、これ以上土方の手を汚させたくなかったという気遣いでもあったと。
・姉さん被りの源さんは、久し振りに本当に嬉しそうな笑顔で。小林さん似合い過ぎですよ〜(笑)
○土方
・久し振りな、相変わらずの素敵な突っ込みっぷりに心和ませてもらいました(笑)
・沖田を気遣う余裕が僅かでも在ったことに、ホッしました。
・新八と気まずいから、と宴席でも居心地悪そうにしてる姿に歳相応の中身を見ました(これも久し振りだわ)。
・やはり「内緒」で遊んでるんですな…(いや〜「悪い笑顔」付けてくれて有難う、山本土方/笑)
○平助
・姉さん被りで団扇持ってる平助が、可愛くて可愛くて(笑)
・平助の「誰もが沖田さんみたいになれる訳じゃないんですっ」は、血を吐くような叫びに思えて切なくてなりませんでした。
・沖田になりたくて、努力したけれどなれなくて、己の才能を見切ることで違う視点を得た平助。そして、その時の悔しさや痛さを踏み台にして、分相応の「居場所」を見つけた平助だからこそ、伝えられる言葉だと思います。
・「仔犬コンビ」からここまで成長したものだと、しみじみしました。
・予告で大泣きしたのは、31-32話以来です。

○その他
・坂本とお竜の会話が、山南さんと明里の草津と最後の逢瀬が重なりました。なんで同じ言葉使うんや〜三谷(見当違いの怒りぶつけないように)
・ある意味主題だった、左之&おまさちゃん。いや〜良かった。
・「何時の間にやらこんな事になってしもて...」と此処まで来ても容赦無いおまさちゃんが本当に可愛いです。
・ちゃんと良妻&尻に敷き始めてる感たっぷりなおまさちゃんと、それを如何にも楽しんでそうな左之は、お似合いですとも!しかし、金屏風前の左之は違和感たっぷりでしたな〜(笑)そして何より、ご両親にどんな挨拶したのか非常気になります(番外編作ってやってもらえないでしょうか?/無理です)。
・伊東センセと岩倉の胡散臭さ対決(違)。どうやっても、岩倉の方が役者が上でしょう、胡散臭さも腹黒さも含めて(誉めてます)。そして、岩倉が出てくると途端に「陰謀」っちくというか「只ならぬ」雰囲気が漂うのは、なんと言うか流石ですか?(何故に疑問符)
・その胡散臭さ直球の中村岩倉に「胡散臭い」と言わしめた、谷原伊東って(笑)
・確かに伊東センセ胡散臭いんだけれど、底が浅いというか必死さが無いというか。あらゆる事を飲み込んでカオス状態になってる岩倉と比べたら、やはり「甘い」というか「稚い」というか。
・谷長兄は何処までいっても、腑抜けだったということですね(酷)
・周平の強さと「あかんたれ」さは、ある意味義父譲りかと思ったり。けど、本当に真っ直ぐで良い子だよな…
・斎藤が浅野を逃がして、沖田がそれを咎めるって、今後の二人の対比が楽しみになってきました。
・沖田と斎藤がそれぞれ「年相応」の表情になっていくのが、面白いと思います。役者に触発されて書いた脚本を、役者が的確に演じるとこんな風な相乗効果を生み出すんだ、と妙に感心してます。
・一橋慶喜公。「理に勝ちすぎる」イメージ通りです。あの神経質さが好みだったり(え)。如何にも坊ちゃんな会津公とのコントラストが見事です。しかし、ここに来て容保公が殿様らしく見えてくるのは不思議です。