2011年5月7日土曜日

ハリーポッター『死の秘宝』Part1 感想

某所にて5/7公開

 連休前に職場の方からDVDを貸していただき、この連休中に鑑賞したのでその感想をば

 公開時には「最近お気に入りなビル・ナイが出るみたいだし、ロン&ハーマイオニーの小さな恋の進展もありそうだし」という、相変わらず本筋からズレまくった理由で行く予定でした。が、何となくタイミンが合わず見逃す結果に。

 以前にも書いてたかと思うんで繰り返しになりますが、これまでのハリーポッター映画は主にゲイリー・オールドマンとかアラン・リックマンとかマギー・スミスとかの英国年輩俳優陣目当てで観に行ってました。あと、ハーマイオニー&ロンの小さな恋の物語も。
 基本ハリーがどうなろうと関係ない、という鑑賞姿勢はホントどうかと思うんですが、それはもう嗜好として仕方ないと思ってください。「ハリーの物語」についてはありふれた貴種流離譚でしかない上、彼が行うことすべてが肯定され、評価さされる世界や社会はどうよ?と思ってるので。
 コレに関しては、今回もハリーが言う事がほぼ受け容れられてたのでなんとも…ここまで貫くと凄いぞ!とは思います。ただ、今作に於いては作中でその部分をロンが突っ込んでくれたので、そう思ってたのは私だけじゃないんだ!と少し溜飲が下がったかもです。

 さて本題の、今回借りたシリーズ最終作『死の秘宝』。
 観終わった感想は、ヨーロッパは二次大戦で受けた傷を良くも悪くも抱えてるんだなというモノ。特に、ナチスドイツが行ったホロスコートは、トラウマと言っていいくらいの傷を残してる気がしてなりません。
 ヴォルデモート卿が作りたい「純血種のみが生きる社会」とナチスドイツが理想とした社会には差は無いように思います。違うのはフィクションかノンフィクションかだけ。そういう意味でこの作品、
娯楽映画とか児童文学で見せる比喩的としては、よく出来てるのではないかと思いました。こういところからの「歴史教育」ってあるんだよなぁとか、語り継がれることの大切さや、どう語るかって問題もあるよなぁとか考えたりです。
 こう思うのは、日本での戦前~戦後の扱われ方が、極端な美化・賛美若しくは嫌厭・徹底的な自己批判かに偏ってる気がするからです。こういう形で戦中戦後の罪を、ある種客観的に見せてくれる作品が少な過ぎるじゃないかと…。善悪を一旦無視して平坦化し、事実のみを歴史的に評価し、その上で淡々と表現する地が無いような気がするんですよね。事実、取り扱いが難しい時代故に歴史の授業でも飛ばされるし、その結果知らないままで成長して知らないことが恥ずかしくない土壌になってるんだよなぁと。

 映画の話に戻ります。今回、大人たちの「物語」が殆ど描かれなかったので、大人たちがどう動き判断したのが見えなかったのが非常に残念でした。長大な原作を4時間程度にまとめる為には已むを得ず切ったのでしょうが、年輩俳優陣を楽しみにしてた私としては、心底残念(苦笑)。
 ただ、それは元子役達の役者としての成長があったからこそ出来た英断であると思います。「物語」を引っ張れる魅力と力が主役の3人にあったのは、否定しませんし凄いことであると評価しました。いや、特にロン役のルパート・グリントは、将来がホント楽しみで仕方ないです(後述)。

 他、気になったのは画の暗さ。意図された暗さなのは分かるんですが、TVの画面で見ると見にくいこと!細部が見えないから、折角作りこまれてる美術とかが分かり難いのが残念でした。映画館で見るとまた違った印象なのかもしれませんが。

 そして、私にとっての唯一の楽しみである「小さな恋の物語」(笑)。
 ハーマイオニーが無闇矢鱈に健気だし、鈍感ロンも漸く何となく「分かって」きてる状況。しかも、お互い以外にはバレバレで無意識な行動が「あんたら‥それはもうね…」と観てる側が照れちゃいそうな雰囲気。とかなり美味しく楽しい鑑賞時間でした。ぶっちゃけハリーよりも後ろの二人を狙って撮って!!と思うくらい、いい感じのハーマイオニー×ロン(ハーが前なのは譲れません/笑)。

 私がツボったのは、
◯序盤ハリーに変身したロンが無事隠れ家に着いた場面。
 そう、ハーマイオニーがロンに飛びついて抱きつく場面です。あの時の、ロンの微妙に嬉しそうで安堵した表情も良かったし、ハーマイオニーの必死さと安堵感も良かったなぁと。てか、あれはもう出来上がったカップルだろうさ…と思ったんですが、違うんでしょうか??
◯ロンの手当を必死で行うハーマイオニー。
 単純にあの必死さが素敵だったと。
◯テント内で無意識に手が重なってる
 前後関係は覚えてませんが、三人がテントで寝てる場面。ハーマイオニーとロンの指先がほんの少し触れ合ってるんですよ!!それを見た瞬間、年甲斐も無くキュンキュンした訳でして(笑)。意地の張り合いで微妙にすれ違ってるけど、きちんと思いが通じ合ってる雰囲気が出てて大好きな場面です。この二人の恋模様は、地に足が着いてて年相応っぽくて、可愛らしくてホント微笑ましいです。
◯嫉妬にかられるロン。
 中盤のロン君=ルパート・グリントが非常に良かった!!暗い目と疑心暗鬼、ハリーに対する屈折した感情、ハーマイオニーの気持ちを測りかねる様とか。あぁこの子ホントいい役者さんに育ったなぁと実感した場面です。あの手の微かに狂気を宿した昏い目や表情が出来る役者さんが、個人的な好みってのもあるんです。が、きっと将来の素敵ないい役者さんになるのかも、とかなり楽しみが増えました。
 しかも、あの場面のロン君は自分の狂気を自分で分かって制御できてない未熟さをも感じられて、更に評価がドドーンと上がったんです。 第一作から「ハリーよりロン役の子の方がいい役者になるよ!」と言ってた私の目は、単なる贔屓目じゃなかった!!と自画自賛したりです(笑)
 特に、ロンがハリーに「皆君のために戦ってるなんて思うな。僕らは違うことのために戦ってるんだ」(うろ覚えです)な事を言った場面は、いろんな意味で好きだったりします。ロン自身のプライドとかハリーへの劣等感とかが一緒くたになった感じが、切ないようでいてロンの男の子の意地を見せたいい場面だったなぁと。
 そして、分霊箱を壊す場面。ロンがヒーローになったのは、分霊箱を壊したからじゃなく彼の不安や劣等感を打ち壊したからなんだよね、と分かりきった青臭いことを書きたくなります。
 一作目のチェス以降ハリーの付随物とかコメディリリーフ的な扱いしかされてなかったロンが、ロンとしてちゃんと扱われたと思うとホント嬉しかったのでした。
◯ロンが帰ってきた終盤のハーマイオニー。
 心配と安心と怒りと喜びが入混ざった結果の「馬鹿っ。ロンの大馬鹿っ。」と罵倒するハーマイオニーが、心底可愛らしかったっ!!おばちゃんは、あの場面だけで十分満足っと思えた程ツボりました(笑)
 それを受けたロンの天然ボケ具合も素晴らしく、なんなんだこの可愛らしいカップルは!!と大喜び。まぁロンが戻ってくるキッカケも、単に惚気としか思えなくなってるのが、もうホント歪んでるちゃぁ歪んでる見方な気がしなくもないです。

 Part2では、多分待ちに待ったKISSがあるんだろうと思うので、それだけを目当てに映画館に足を運ぶかもしれません(馬鹿モノ)。

 本編&特典映像に関する感想を箇条書きで。
・ヘドウィクはあれで亡くなってしまったんでしょうか?!?そうだとしたら、作品中での彼の扱い悪すぎ…。
・7人のハリーなロン君帰還。ロンの活躍を観たかった…てかせめて聞かせてくれっ!!(翻訳本読む気無しなのが、申し訳ないです)
・魔法省大臣=ビル・ナイの出番あれだけですかい?!勿体無いことこの上ないぞっ。
・スネイプなアラン・リックマンは相変わらず素敵なお声で、うっとり。ご本人がかなり男前なため、フィルターがかかりスネイプも男前に見えてくる不思議(笑)。『ダイ・ハード』の敵役なアラン・リックマンは、心底男前なので是非一見下さい!!ホント男前過ぎてビックリしますよ!
・今回、マクゴナガル先生=マギー・スミスが出演されておらず残念。
・ルーピン先生=デヴィッド・シューリスの枯れ具合が好みで非常に満足(笑)
・結婚式のテント場面は、唯一華やかで軽やかで優美なので好き。
・ロンの「ハーマイオニーがいなきゃ、2日ももたない」な台詞は、今から尻に敷かれてどうするロン!と突っ込みそうになりました。まぁその情け無さがロン君の魅力っちゃぁ魅力なのですがね(笑)
・そんなロンの情け無さをも受け止める、ハーマイオニーの男前っぷりに拍手(笑)。不安のあまりラジオを聞き続けるロンを擁護するハーマイオニーの姿に、慈愛とか諦めとか垣間見ました。あの年齢で出来た子だわ。
・両親の記憶を消すハーマイオニーの覚悟に、彼女が一番辛くてキツイ経験をしてるんだよなと。マグルであるが故の差別もあるし、早く大人になるのも道理だよなぁとか。
・特典映像でロンの美味しい場面がm尽くカットされたのが分かりちょっとどうかと。特に野うさぎの場面は、彼らでも持っている「残忍性」や遊びから生れた小さな「殺意」など、深めるにはもって来いだったのに何故と、疑問に思わざるを得ませんでした。時間の制約では仕方なかったのかもしれませんが、ホントに何故あれを。
・駆けっこレース。3人の勝気さが垣間見えて面白い特典映像でした。
・分霊箱のロケットが、『tLotR』の一つの指輪にしか思えなかった(_;;。かの作品(原作)は、現在のファンタジーに影響を与えてるとは言っても、あれはちょっとやり過ぎじゃないのか?と。なんかもっと違う表現、モノ無かったのかなぁ…。
・屋敷妖精が、やっぱり『tLotR』のゴラムにしか見えない件。特典で「これぞ」みたいに制作秘話やってましたが、あれはゴラムと同じ手法です…。今更それを大声で語られてもなぁ…10年近く前に『tLofR』がやったよなぁとしか。そう思っちゃうのはあの映画を飽きるほど観てるからだと思いますです。