2008年5月25日日曜日

E=MC2

 先日、11歳年下の俳優さんと電撃結婚あそばされ、来日間近な(CD購入者限定Secret Liveは当然の様に外れました/涙)Mariah Careyの新譜についての感想です。

 4/16に入手して以来、ヘヴィーローテション状態です。ここまで聞き込んだのは『Daydearm』『Music Box』以来かもしれません。それ程、すっぽりツボをついてくれたアルバムでした。
 
 まず、アルバム全体の印象を言うと「ライブ向きじゃない」し「賞を取るのは難しいかもしれない」です。が、相変わらず声の重ねとか音の作り込みは完成度が高いし、捨て曲が無い。何より、Mariahが楽しそうに豊かに歌っている幸せな充実感のあるアルバムだと感じました。
 また、SONY時代とは違った形の「普遍性」を感じたアルバムでした。R&BやPOP等様々な種類の楽曲が一つのアルバムに収められているのに、混乱せず巧く融合して「Mariahしか作れない色の方向性」が生まれてる様に感じました。この方向性が打ち出せただけでも、Def Jamに移籍する価値があったと思うし、移籍が正解だったと初めて思えました(笑)

 Marihaが「今作はデザートなの」と語った様に、前作の流れを押さえつつ前作との統一感を意識してるなぁと思います。前作との違いがあるとすれば、方の力がいい感じで抜けてる声と曲だと思ったりです。
 前作が「バリバリ賞狙い=復活狙い」という明確なコンセプトで作られていたならば、今回は「地場が固まったからちょっと遊んでみた」がコンセプトなアルバムじゃないかと。

 密林さんのレビュ等では「SONY時代が良かった」的な感想が散見されますが、それに関しては「だったらSONY時代のアルバム聴いてたら良いやん」と返したくなります。新しい方向性を模索しない歌手って面白く無いし、それが失敗するか成功するかは才能だったり製作陣の質だったり(良い製作陣を引き寄せる本人の運や資質ってのもありますが)すると思うんですよ。勿論私もSONY時代のアルバムが大好きです。Walter Afanasieffと作った楽曲は名曲が多いと思うし、愛しています。けれど、それが今の方向性を否定する根拠には成り得ないんですよね、何故か。
 迷走時のアルバム(『Rainbow』から『Charmbracelet』)時には「SONY時代の方が良かったよな。『DAYDREAM』・『Music Box』は名作やったよな〜」と懐かしんでましたが(苦笑)。それは単に、アルバムの質の問題であって方向性云々では無かったんです。だから、前作今作の様な充実した内容のアルバムを作ってくれたのならば、過去を振り返る必要は無いと思う次第です。というか、今のMariahに当時の様な歌を同じ様に歌えって言うのが、『HONEY』で区切りを付けたであろう彼女にはとっては無駄だし無意味な様な気がしたりしてます。

 さて、収録曲に関して。
1.Migrate featuring. T-PAIN 4:18
 youtubeに上がっていたFNLを観た時「一体どんな曲やねん?もしかしてアルバムこんな感じの曲ばっかりか?」とやたら不安を煽られた曲です(笑)。
 Liveよりは聴きやすくて、T-PAINのラップもそれ程気になりませんでした。意外とサビの部分が生理的に嵌ってしまう曲かもしれません。

2.Touch My Body 3:25
 自虐とも言えるPVに大受けさせていただきました(笑)。色んな意味で吹っ切れたよね〜Mariahってば、と微笑ましく嬉しくなった作品です。
 公式HPでフル視聴した時から何故か嵌りまくりで、アルバム購入時には完璧に歌える様になってた程聞き込んでました。彼女お得意の、声の重ねも巧く嵌ってて、何回聴いても違う声が聴こえて飽きない曲の一つです(この自声の重ねは職人技ですよ^^;;。てか、どんだけ音程変えて歌えるねん!と思ったりです)。
 好きな理由は、曲が明るくて可愛らしく、ちょっとエッチぃのに何故か愛らしい歌詞と愛らしい声。完全にKnock Outさせられました(笑)。この曲のMariahの声は、ちょっと可愛くて色っぽくてお間抜けで、今までに無い感じの雰囲気が魅力的だと思うんです。特に「About this secret rendezvous I will hunt you down」部分の少々脅しめいた雰囲気なのに、愛らしい声がお気に入りです。
 
3. Cruise Control featuring Damian Marley 3:33
 冒頭のラップからどうなるかと思いきや、ちゃんと今のMariahらしい曲になってるのに意外でした。
 輪郭のある歌声でバックでは刻んでる筈なのに、何故か浮遊感があり大変気持ち良い曲。

4.I Stay In Lov 3:32
 ほぼ地声で歌ってるのかな?これまでの様にHigh toneで歌い上げる事も無く、Whisper voice一本やりでも無い。一番楽な音域で歌ってるであろう筈なのに、色んな色彩を帯びていて、とても響く曲です。彼女の「声」の魅力+表現力と巧さで聴かせてくれる曲じゃないかと。
 主旋律の声も良いんですが、後ろに流れてる低い声がツボだったりします。
 
5.Side Effects featuring Young Jeezy 4:22
 これは歌詞がメインの曲です。前夫との関係がモチーフだそうですが、DVなんかで苦しむ女性達へ向けての曲なんだろうなと思うんです。決して特殊な事でなく、女性であればもしかしたら陥るかもしれない『状況』をMariahがテーマにするとは正直意外でした。決して「応援歌」でも「女性の自立を促す」ような曲ではありません。淡々と刻む様に「その状況」を歌うだけです。なのに(「だからこそ」なのかも)、その「状況」から単に「自分が自分である」為や「自己の尊厳を守る」為だけに逃げる事は決して間違いではないと、肯定され背中を押されてる気がします。
 この曲を最初に聴いた時は、何て痛々しいんだと感じ、歌詞が気になり和訳を読み、それでは満足せず英詩の単語をちみちみ拾ってみたりしました。そうして漸くタイトルの『Side Effects=副作用』を理解しました。
 
 私が引っ掛った歌詞の一部を転載します。

Wakin' up scared some nights
Still dreamin' 'bout the violent times
Still a little protective 'bout the people
That I let inside
Still a little defensive
Thinkin' folks be tryin' to run my life
Still a little depressed
Inside I fake a smile and deal with the

 
 これを聴いて、歌詞を読んで意味を掴んだ時、ゴシップとして知っていた事が、彼女によって「副作用」と歌われると、あの結婚と離婚が彼女に与えた影響は大きく、何とも辛く痛いモノであったんだと今更ながらに感じました。
 
6.I'm That Chick  3:31
 前曲とガラッと雰囲気が変わって、むっちゃ無邪気なlove song。明るを感じる曲でサビの「I'm that chick you like.」がツボです。
 これはライブで聴いてみたいな〜と思うんですが、この声の重ね具合から想像するとMariahが何所を歌うかが判らなくなりそう(笑)。
 
7.Love Story 3:56
 JDの間の手がなぁ(^^;;。決して悪くは無いんですが、気になると耳についてしまうのが非常に何とも...です。
 JDの間の手さえ聴こえなくなってしまえば(って)、この曲は名曲だと思います。メロディも歌詞も美しいし、少し憂いのある声も叙情が感じられて巧く嵌ってる気がします。この曲を聴いてイメージするのは、モノクロかセピアな映像なんですよね。それが喚起されるのはきっとサビの

Just another love story
Together we'll make history
I know because it's just too real
They'll be no end to our love story
And this ain't gon end up
Like that Casablanca movie...no
This ain't no fairy tale or fiction
This is truly
Ours for the eternity
They'll be no end to our love story


部分があるからです。こういう歌詞はMariahでは珍しいなぁと思ったりしたし、そうか「カサブランカ」かぁとデートリッヒとボカードで「君の瞳に乾杯」だったよな〜と明後日の感想を抱いたからです(単純)。

8.I'll Be Lovin' U Long Time 3:01
 何故野球の曲?!勿体ないやんけ!!!とタイアップに憤りを感じました(苦笑) 
 これも、名曲だと思うんですよ。刻みつつもきちんとメロディが流れて印象深いフレーズも効果的に使われてる上、歌詞も包容力を感じさせるモノだし。なのに何でタイアップがあれなんだ!!と日本のuniverの戦略に納得が行きませんよ!
 しかし、兎に角可愛い曲なんです。『Touch My Body』や『I'm That Chick』も可愛らしい曲ですが、これは大人の女性がふと見せる可愛らしさを感じさせられます。

9.Last Kiss 3:36
 JDがなぁ(苦笑)
 以前なら歌い上げてたタイプの曲かもしれないですが、淡々と丁寧に歌ってるのが気持良さを増してる気がします。確かに歌い上げてるんですが、前面に出てるのが中音から低音なのがこれまでとは違います。しかし、別れの曲を憂い無く歌える様になったんだ〜と感じた曲でもあります。

10.Thanx 4 Nothin' 3:05
 キツいタイトルが素敵です!
 最初にアルバムを通して聴いた時、引っ掛った曲がこれでした。内容はベタなんですが、これまでとは違った視点で「突き放した」歌詞であったのに驚いたんです。曲の感じも淡々と状況を話してるだけで、どうしようも無い男に激昂したり未練があったりするのではなく、そんな男に捕まった自分も呆れつつも別れる事で清々してる雰囲気があって、格好良い感じで好みです。
 
11.O.O.C. 3:26
 第一印象はそれほど強く無かったんですが、何度も聴くうちに何故か中毒になりました(笑)。この曲に関しては、何が好きとは言えないんです。なのに、中毒になるという不思議な曲です(^^;;

12.For The Record 3:26
 このアルバムで一番好き!というか、歴代大好き曲のTOPに躍り出た曲です!えぇ『We Belong Together』や『Always Be My Baby』や『Anytime You Need A Friend』や『Fly Like A Bird』や『Make it Happen』や『Mine Again』やら一気に追い抜かしですよ!(なんの事やらさっぱりですね^^;;)
 遊びを含みながらもどこか切ない歌詞と、切ないのに温かみあるメロディが大好きです。この切なさはヴァイオリンの演奏に依るものかも知れませんが、こういうアレンジは珍しくて、弦と声が巧く嵌ってるのが非常に嬉しい驚きでもありました。こういうシンプルな感じの曲を聴かせてくれると、古くからのファンは何やら無性に嬉しくなってしまいます。
 
 この曲に感じられるのは、過去を静かに愛おしく懐かしく振り返ってる姿であって、激しい後悔では無いんです。確かに、一抹の寂しさだとか憂いとかはありますが、それは過去を振り返る時に生まれる一時の感情であり、基底には無いと思います。そして、歌詞に見られる遊び。特に、後半で ”You'll always be a part of me” ”my all” ”underneath the stars” ”belong” ”can't let go” ”honey”のタイトルを出してくるのが、一ファンには嬉しい驚きでした。これまでのMariahの歌詞にはこういう遊びが無かったかと記憶しているので、ホント意外でした(この選び方も私のツボを押しまくりでした/笑)。この曲を聴いた後、これらのタイトルを聞き直したのは勿論ですとも!
 更に、タイトルの”For The Record”。辞書で調べて「しばしば」という熟語である事を知りました(恥)が、何となく色んな意味を持たせてるんだろうなと思ったりしています。こういう企み(なのか?)もMariahには珍しいかなと思います。

 歌詞を読んだ時に思ったのが『Side Effects』と対をなす曲なのかな?でした。あくまでも私の勝手な思い込みなのかもしれませんが...。そう思った理由は、

Cause when I'm looking in your eyes
Feels like the first time
Give me one good reason why
We can't just press rewind
I don't wanna spend my life
Thinking what it could've been like
If we had another try (one time)
Like back in the day
That look on your face
Feels like, the first time


という部分です。自分でも単純だとは思います(^^;;。
『Side Effects』と言い切った事で、漸く過去を穏やかに懐かしめる様になったのかと。
 こう、邪推させてくれる歌詞だったり曲だったりってのは、しつこいようですがMariahのこれまでには無かった様に思います。だからこそ、今回のアルバムは面白いし何度でも聴きたくなるような気がしています。
 
13.Bye Bye 4:27
 非常に王道な曲です。『Hero』とかの一連の曲と比べると若干軽いと感じるかも知れませんが、非常に出来の良い曲です。
 とても優しい歌詞と曲。聴いててもの凄く愛おしくなります。誰かを思って聴いても良いし、何も考えずこの声と曲に身を委ねて聴くのも良いかなと。
 しかし...このPVで運命の男性と出会ってしまうのが、如何にもMariahらしいというか何と言うかです。この場を借りて、再婚おめでとう!と書かせてもらいますm(__)m

14.I Wish You Well 4:39
 ピアノの旋律だけなのに、音の豊かさを感じさせてくれる曲。
 こういう楽曲の良さと歌で聴かせてくれる曲を、最後に置いてくれるのはホント嬉しいし、有り難うの一言です。

15.Heat  3:37
 Bounce Track なのに流れをぶった切らない、珍しい曲かもしれません(誉めてます)。なかなか強気な感じの歌詞で、思わずビヨンセかあんたはっと突っ込んでしまいました(笑)
同じ様に強気な歌詞であっても、こうも印象の違う曲調になるんだなぁ感じ入る事ができる曲でもあります(だから誉めてます)。
 
16.4real4real 4:13
 日本盤限定Bounce Trackですが、良くこれをBounce Trackにした。偉いuniversal 良くやったな出来の曲です。これを聴いて1.Migrateに戻ると、『Migrate』が浮いて聴こえないという素晴らしい構成です。
そのお陰で延々リピートする羽目に陥るんですが、それが戦略としたら凄いぞuniversalです(むっちゃ誉めてます)。
 曲はwhiper系で癖になります。

 これがデザートであるとすれば、次のアルバムは一体どういう形になるんだろうか?ともの凄く期待してしまいます。願わくば次のアルバム制作時に泥沼の離婚騒動だけはやらかしてくれるな、頼むぞMariahです。正直離婚はしても良いと思います(酷)が、アルバム制作に影響の無い範囲で頑張って欲しいと強欲且つ身勝手な一ファンは願うばかりなのです(だって、私生活がもろ影響する人だし...)。勿論、今の幸せがずっと続いてくれるに越した事はありませんし、それを一番に願ってはおります。
(なんかファンとは思えない〆になってしまったようですが、本当にMariah Careyが大好きなんですよ!)