2008年5月25日日曜日

両足突っ込んだあれこれ6 新・スタートレック

 ブルーレイに乗り換える時は、『新スタトレ』もブルーレイ版に買い替えなきゃなと素で思う位好きな作品です。
 はっきり言ってこの作品に嵌ったのは、相方の陰謀です(笑)。 
 切っ掛けは映画『X-Men』(2000年)を観てる時、序盤のPro. Xとマグニートが対話する場面で相方が隣で呟いたんです「あれ?艦長ちゃうん」と。その時私は、その場面に出てる爺さん二人の巧さにクラクラきておりました。有り体に申せば、Pro. Xとマグニートの魅力に小さな心臓を撃ち抜かれ、二人共に一目惚れ!状態でした(笑)。
 映画鑑賞後「あの二人の爺様格好良すぎ!素敵過ぎ!!むっちゃ巧いやん!何て人なのかしら!?」と本編から激しくかけ離れた感想を語る私に、パンフを読んでいた相方が「禿頭の方は、やっぱりスタトレの艦長やん」とやはり意味不明な言葉を掛けてくださいました。何の事かさっぱりだった私に対して、相方は速攻映画版をレンタルし、当時偶々地方局で深夜放映していたTVシリーズの視聴を勧めて下さったのです。なのに当時の私ときたら眠気に負けて視聴すらせず、その面白さすら理解しませんでした。
 
 それから暫くして、偶々立寄ったCD店で『新スタトレ』1stシーズンDVD-BOXを見つけた相方が言うのです、「奥さん、これを買ってみないかい?食事の時に見るのに丁度良いと思うんだ」と。値段に少々引いた(2万5千円位だった思う)ものの、あの素敵な爺さんが出てるし、相方がやたら勧めるし、TVも見るものないしって事で思い切って買ったのです。
 
 正直、パイロット版は安い作りとしか思いませんでしたが、確かに話は面白いし、何よりピカード艦長演じるパトリック・スチュワート氏に魅了されて(別格なのが素人目に判る程巧いんですもの)視聴続けました。そして、「宇宙空間の名探偵」で完全にスッ転びましたよ!ホログラム・デッキでデータ少佐がシャーロックごっこをするってだけ筋(粗いにも程がある筋)なのに、何この面白い脚本と作り込んだ設定と個性あるキャラは?!と唸りました。
 結局、毎月発売されるBOXを特典目当てに予約し、最終(第7)シーズンまで大枚はたいて買い揃えさせていただきました。勿論、映画版DVDやエピソードガイド本も買いましたよ!(エンサイクロペディアとかコンパニオン新版 (大型本) とかも欲しいんですが、金額が...)。今となっては、もう少し頑張ってプレミアム版を購入すべきだったと後悔するばかりです。
  
 この作品の素晴らしい所は、シーズンが進むに連れて作品の質が向上することです。45分のTVドラマとは思えない程、練られているエピソードが多い。キャラクターの造形が巧くて、シーズン最後まで破綻や齟齬を見せなかった。SFとしても十分出来が良いし、時間や空間を扱ったエピソードに関してはどれも秀逸。何より、メインの役者が巧い!なんかが挙げられと思います。
 ファンによる検証サイト等を拝見していると、時間軸に矛盾があったり台詞にも齟齬があったりするそうですが、それを差し置いても十分面白い作品であると思います。なので、何度見ても飽きる事が無いし、見る度に新鮮な驚きと違う発見、感動があるという素晴らしくコスト・パフォーマンスの良い作品です(我家限定か?)。
 
 特に第2シーズン以降キャラクターが馴染んだのか、脚本スタッフの意思統一が出来て来た所為なのか判りませんが、奇を衒った作品よりも「人間」や「時間」「空間」と言った哲学的なテーマの作品が増えた様に思います。特に第3-7シーズンは、本当に充実したエピソードが多いんですよ。勿論どのシーズンにも駄作はあるんですが、後半になるにつれ良エピ比率が上がるし、駄エピも第1シーズンの駄エピとは比較にならない程出来が良いです。

 そして上記でも触れましたが、「人間とは?」がテーマなんじゃないのか、この作品は?と思うくらい、手を替え品を替えエピソードに織り込んできます。これは、人間になりたいアンドロイドであるデータ少佐の存在が大きく影響していると思います。彼の存在無くしてこのテーマは語れないし、生まれなかったんじゃないかと。あと、「時間」についてもSFらしく並行世界を扱ったり、過去や未来を扱っているエピも多くありますが、どれも非常に巧いと感じます。正直、この辺りを扱っているエピは「頭を使いながら」見ちゃうくらい面白いし、何時見ても違う発見があります。

 本国では「ピカード艦長に見るリーダー論」ってな書籍が発刊された程理想のリーダーとして描かれてるピーカード艦長を始め、個性豊かな上級士官の面々は普遍性があると言いましょうか、薄っぺらくないキャラクターなんです。理想のリーダーと言われる艦長ですら、弱い所や駄目な面を見せます。それが制作者側の矛盾とか手抜きと感じさせる事無く、逆に人物造形に深みを与えているのはきっと役者さんが巧いからなんですよ(力説)。
 
 キャラクターを語り始めると、ホント長くなるんですが大好きな艦長&データ少佐について少しだけ。
 
 まず艦長は、私にとっても理想の上司です。はっきり言って、存在感や彼の決断、部下との関係、発する言葉全てが理想と言っても過言ではないです。またこの方無くして『新スタトレ』は語れないと思います!!何度か観てると、かなりお茶目だったりお間抜けだったりする面も多々ありますが、それはそれでまた魅力が増すというか何と言うか、素敵なんですよ。某友人と酒飲みながら、艦長が素敵だと言い始めたら止めどなく語ってしまいキリがありません。どの話のどの仕草や口調が素敵だったとか、お茶目だったかとか延々語ってしまうくらい大好きです!
 この方、話が進むにつれ部下に対してガンガン甘くなります(笑)特にデータ少佐に対しては、「あんたその対応は甘いっ!!!甘過ぎ!ってか過保護過ぎ!!」と相方共々突っ込むくらい、過保護な父親状態に成って行きます。そんな部下に甘い様を某映画系イラストサイトでは「保父さんなピカード」と表現されており、その表現は非常に言い得て妙だと激しく納得してしまいました。
 
 次にデータ少佐。彼も『新スタトレ』に欠かせないキャラクターです。彼が居るからこそ「人間とは何ぞや」と終始問い続けられたように思います。そして、データ少佐の無垢さが作品にちょっとしたユーモアを与えてもいました。彼がメインになる話は、秀逸なモノが多く毎回見入ってしまいます。
 
 他にも、陽気でモテモテで強気で如何にもアメリカ人なライカー副長(艦長からは「NO.1」と呼ばれる)や、データ少佐と良いコンビで仕事が出来るが非モテで貧乏くじ引きまくりなラフォージ少佐や、男前な女医Dr.クラッシャーとか、2つの異なる文化の間に居るウォーフ大尉とか、とことんダメでトラブルメーカーなバークレーとかホント人間関係だけも楽しいんですよ(笑)

 好きなエピソードは数多くあるんですが、いくつか挙げるとなると...
 
 第5シーズン「超時空惑星カターン」
 一つの滅んだ惑星の人々が一人の人間の記憶に彼らの記憶を残す為に、滅ぶ直前に衛星を打ち上げ、その衛星に感応した人間が「現在」とは違う人間として「その星で一生」を過ごす。「邯鄲の夢」スタトレ版と言われているエピ。
 別格で大好きなエピソードです。これは艦長を演じておられる、パトッリク・スチュワート氏の演技があってこそ成立した話だと信じて疑いません。勿論、脚本も演出も音楽も本当に素晴らしいんですが、半生を違和感無く演じられ、尚かつ観てる側に色んな事を考えさせ、感じさせるそんな演技です。
 
 第2シーズン「人間の条件」
 人間とは何か?人権とは何か?を正面切って問うたエピ。「人間が人間であるとはどういうことなのか」というテーマをアメリカ人が好きであろう法廷モノにして見せた、秀逸な作品です。正直この話で「このドラマは侮れない。単なるSFじゃない」と思いました。徹底して「人間とは。人権とは何ぞや」と問いかけて、答えを探そうとする姿勢に「たった45分のドラマなのに!なんてこったい...」と瞠目しました。また、渦中のデータ少佐の佇まいや、データを弁護する艦長の論証、やむを得ず反証する立場になるライカー副長の逡巡、それらが巧く絡み合い、法廷劇としても十分堪能できます。

 第2シーズン「ホログラムデッキの反逆者」
 上記でもほざいてますが、データのホームズとジョディのワトソン扮装、Dr.ポランスキー(このシーズンだけの船医でしたが、Dr.クラッシャーとは違う客観性が大好きなんです。この方が船医で居続けて下さったら面白かったろうにとすら思います)の麗しい格好、そして艦長のヴィクトリアなコスプレ!!!!に完全打ちのめされました。勿論、シャーロック・ホームズを下敷きにした話も十分面白くて、このエピを観た後BBC製作のドラマ『シャーロック・ホームズの事件簿』DVD-BOXを相方の強い希望で購入する羽目になりました(_;;。そのお陰でこのエピでの、作り込みの見事さに再度感心する事ができました(ちなみに、このエピはシャーロキアンの間でも評判が良かったとか)
 
 第3シーズン「アンドロイドの目覚め」
 データとラル。それを見守る人々の在り方。淡々とした話ですが、台詞や演技の一つ一つが丁寧で無駄がない。だからこそ、最後の場面で沁み込んでくる作品です。
 
 第3シーズン「倒錯のホログラムデッキ」
 バークレーの妄想炸裂!なお話。何が素敵って、銃士(なのか?)の恰好で楽しそうに剣を振り回しておられる、館長とデータ少佐の姿です(笑)
 バークレーが絡む話は、どれもどこか痛面白くて好きだったりします。
 
 第3-4シーズン「浮遊機械都市ボーグ」
 前後編とも無駄のない作りで、最後までドキドキハラハラさせてくれます。何より、ボーク化した艦長=ロキュータスが男前で格好良くてで色気たっぷりでクラクラしちゃうんですよ(って...)
 
 第7シーズン最終話
 大円団な作りに乾杯☆です(笑)
 パイロット版をきちんと引きつつ、過去と現在そして未来を行き来しつつも矛盾を感じさせない脚本。それぞれの空間を唯一往来し困惑しつつも、一つ(あるいは多様な)答えを見いだす艦長の存在が際立っています。
 この話は、老人になった艦長を皆で鬱陶しそうに「生温く」(笑)見守ってる姿が楽しく、あぁ皆結局艦長が好きなのね〜と見ている方に生暖かい感情を抱かせてくれます。
 また最初から最後まで我侭で頑固な老人艦長の面倒を見続ける羽目に陥るジョーディが、非常に哀れでなりません(笑)。何が可哀想って、一生懸命面倒みてるジョーディに対して「お前は役に立たん(=儂の言う事を理解してくれん)。やっぱりデータじゃなければダメじゃ!!!データの所に連れて行け!」と、何所までもデータ頼りな発言を言いまくる艦長の我侭に、渋々従わざるを得ない状況だったりとか。連れてったデータ宅では、データは相変わらず「艦長の仰る事も一理ありますね。」と何所までも忠犬な発言をし、艦長から「やっぱりデータは役に立つ! (=儂の言う事を理解してくれる)」と誉められるのに、異論を挟んだジョーディは「儂をバカにしとんのか?」と怒られるし。副長は副長で「老人(=艦長)の妄想に付合わされるのはまっぴらです!大人しくしてて下さい。」と大人発言を振りかざしつつ、ジョーディに対しては「お前が付いてながらなんで止められなかった」と責め立てるし...この話はラフォージが可哀想で可哀想でなりません(笑)
 
 未来話は色々ありますが(映画版含)、私にとっての『新スタトレ』正史はこの最終回で描かれる『未来』です。だって、データ君が幸せにスポットの子孫達と暮らしてるんですもの!データ君が亡くなってしまう、映画版なんてパラレルでしかない!と断言しますよ(副長とカウンセラーが結婚してるしてないはこの際些細なズレです/笑)
 
 『新スタトレ』も機会があれば、個別に感想書きたいなぁと思うんですが、177話全話となるとかなり無謀だよなと腰が引けてます。が、好きな話だけはそのうちなんとかするかも知れません。