2008年6月9日月曜日

氷室冴子さん逝去 (6/9 若干内容追記)

新聞を読んでいた相方に「氷室冴子 亡くなったらしいよ」と言われ、言葉が出ませんでした。まさかまさかこんなに早くに逝ってしまわれるとは...

 『金の大地銀の海』以降、筆を置かれたかの様に新作が出なかったと思っています(復刊されたクララ等のあとがきくらいかな?)。それがとても不安で、氷室さんなにしてらっしゃるんだろう?お元気なのかな?どんな形でも良いので新作拝読したいなぁと思っていたのですが、まさか...
 (よしながふみの対談集内で萩尾 望都から氷室冴子の名前が出たのが、消息を知った最後でした。あぁお元気なんだと、もの凄く安心したのに...)
 
 小学校高学年で氷室作品と出会って以来、氷室冴子著は手当たり次第に読みあさり、買いあさりました。作中で触れらている東西の名作を読んでみたり、『ざ ちぇんじ』『なんて素敵にジャパネスク』で描かれた平安時代に興味を抱きその時代が好きになったり、私に色々な影響を与えてくれた作家でした。
 また、氷室冴子は私にとって、大切な大好きな作家さんでもありました。この方の作品を読んで色々世界が広がったし、好きな物事がいっぱい増えたし、何より大切なものを一杯もらった作家さんでした。
 私は好きになったらかなりしつこいんですが、氷室冴子に関しても同じ。出会ってからずっっと好きなんですよ。どんな作品をどんな媒体で書かれても絶対追っかけて行こう!と思ってたくらい好きでした(実際どんな出版社から出ても作品集めてました)。

 横に逸れますが、文壇内での評価は媒体の所為もあり低かったのがホント悔しくて悔しくて仕方ありませんでした。贔屓目だとは思いますが、もっと評価されても良かったんじゃないかと。
 古典の換骨奪胎の手腕とか、流麗なのにそれを感じさせない文体の軽やかさとか、キャラクター造詣の巧さとか。大げさに言えば、今評価されてるライトノベル作家の原点とも言える作家さんだと思ってます。(ってか、コバルト黄金期を築いた氷室冴子や久美沙織や新井素子が居なければ、現在のライトノベルっては存在し得なかったんじゃないかと思ったりもしてます)。

 『ジャパネスク』シリーズには大きな影響を受けたと思っています。歴史というモノに興味を持ち、歴史が好きと言えるのはこのシリーズのお陰です。
 シリーズで描かれる平安時代の文化はとても魅力的で、美しい色彩に満ちていました。その後、授業で無味乾燥とした平安時代を学びんだ際も、小説との差(違い)を必死で探してみたり、どう料理しているのかと歴史そのものに益々興味を抱きました。そして、氷室冴子が描いた平安時代の基本は、大きく間違って居ない事に驚きを覚えました(作家の情報処理の腕にも)。
 何より教科書に書かれている奥には、小説に描かれている色彩豊かな美しい世界があったんだと思えた事は私に取っては本当に有益でした。
 
 この方の作品は、少女というものに対して優しくて厳しかった。少女の甘さやずるさを慈しみながらも、少女の弱さやエゴに対しては容赦のなく抉る。けれど、少女達の精神的な成長を描き、何かしらの救いを与えていたと思うんです。
 それが顕著に現れているのが『シンデレラ迷宮』と『シンデレラ ミステリー』ではないかと。利根という自ら作った繭に閉じこもった少女が、彼女が知らずと産み出した悲しみの国で出会う物語の登場人物達。彼女達は本当の物語で演じてた役割で無く、少女の憎しみや悲しみを映し出す人物でした。
 少女と彼女達が出会い語る事で、少女は「自らと向き合い、変わる」事を知り、「成長」する。全体に静かな小説ですが、氷室作品では『ジャパネスク』シリーズと同じ位大切で大好きな作品です。

 氷室作品は今も大好きな大好きな作品です。そして、その作品を生み出された氷室冴子という作家も大好きです。だから、出版社にお願いします。大人が持っていて恥ずかしく無い装釘で、全集出していただきたいと切に願います。

 氷室冴子作品と出会えて心から感謝します。素敵な作品を贈って下さって本当に有り難うございました。
 心よりご冥福をお祈りいたします。