2014年12月14日日曜日

映画「ホビット -決戦のゆくえ-」雑感

初回視聴した勢いのまま打つネタバレ満載の雑感です。


 PJの「ホビット」三部作と「中つ国シリーズ」全六作がこれで終わりました。まずは、素晴らしい映画「LotR」と「ホビット」を世に送り出してくれたPJにお疲れ様とありがとうございます!を言いたいです。そして、このシリーズに関わった全スタッフと全キャストにも惜しみ無い拍手を送りたいです。

 本題の「ホビット-決戦のゆくえ-」ですが、作品としては賛否両論、好悪が分かれる作品だなというのが見終わっての第一印象でした。確かに、原題にもなってる「五軍の戦い」は見せ方も映像も素晴らしかったし、戦いの中で生まれるそれぞれのドラマ性は機能してたと思います。中でも、ビルボとトーリンの物語には胸が締め付けられるような美しさと哀しさを感じ、思い返しても涙が零れるくらい素晴らしかったです。
 が、どうしても「王の帰還」と被る場面があったように思えてしまって...。LotRに繋げるための意図的な演出なんでしょうが、若干強引にも感じられたのと、そこに拘ったが故に「ホビット」作品としての魅力や個性は薄れたのかなぁと。
 それと、随分色んな場面をざっくり削ってるのか、細かな場面やキャラクターの動機や行動が飛び飛びな印象でした。繋がれる場面はきっとEEに入るんだと分かってるファンはいいんだけど(正直あまりよろしくないとは思う^^;;)、劇場版だけを観る人にとっては不親切だとやっぱり思うんです。やはり、映画は劇場で鑑賞する人を対象にしてある程度の完成版を見せてるのが美しいのじゃないのかと。EEを買うみたいな好意的なファンに甘えてちゃいけないんじゃないのかなぁと。まぁその辺は、PJ作品だからEEであれこれ補完されるよね~と始めから思ってる私が言うこっちゃないんですが^^;

 今作は役者陣が只管よくて、台詞が無い場面や会話の場面が深く印象に残りました。中でも、ガンダルフがビルボを慰める為にパイプを燻らす場面は、サー・イアン・マケランとマーティンのうまさ故に生まれたものじゃないかと。あの場面の二人がとても愛しくて仕方なく。

 役者ではマーティンがとにかく素晴らしかった!!! これは声を大にして言いたいです。マーティンがビルボで心から良かったとどれだけ思ったか...。ビルボの健やかさと勇気や知恵の美しさは勿論のこと、綺麗なもの汚いものを見つめ続けてきたのが分かるんです。そんな旅の中でビルボが見て聞いて経験して得た綺麗だったり汚かったりするものが、マーティンのビルボからは伺える。それがあるからこそ、どんぐりに思いを寄せる場面や慟哭の場面が胸を打つんだと思うんです。このビルボだからこそ、一つの指輪を長年持ち続けても闇に引きずられなかったと納得しました。
 何よりも、最後に一つの指輪を眺める表情がサー・イアン・ホルムのビルボなのが凄いことだと!!!マーティンのビルボがサー・イアン・ホルムの老ビルボとなるのが一切違和感がない。それどろころか、あのビルボが歳を重ねて老ビルボになるんだと一瞬の躊躇いもなく思える。それってホントに本当に凄いことなんだと思うんですよ!!! マーティンがサー・イアン・ホルムに敬意を払っている素晴らしさと、模倣することなく自身のビルボを創りあげながらも老ビルボを彷彿させる演技をやってのける技量の素晴らしさは、もっと評価されていいんじゃないかと握り拳振りあげたいです。
 と、リチャードのトーリンが素晴らしくて息を呑みました。正直、前2作品ではいい役者さんではあるけどなぁと思ってたんですが、今作を見て「なんて凄い役者さんなんだろうか...!!」と唸り感嘆のため息でした。黄金に魅せられているトーリンの昏く複雑な様とビルボに親愛を寄せる柔らかな表情の差とかが見事で。PJの「ホビット」シリーズはこのトーリンを描きたいがためにあったんじゃないかと今は心から思ってます。

 PJが描く戦いは下(民衆)からの視線が必ず入っていて、戦争とは名も無き民が慣れ親しんだ土地を離たり、声もなく死ぬことだ、決して美しいものではないと、静かにだけれど雄弁に語っているような気がして仕方ないんです。それがあるから、PJの描く戦いの場面は美しく力強いのだとも。と同時に、自ら陣頭に立たない指導者への批判もあるんだろうな。それらは、原作のもつ精神性でもあって。そこを巧く汲み上げているからPJの中つ国は、オリジナル要素を加えてもブレてない印象なのかもしれないと思ったり。
 ブレていないのは、あくまでもホビット=ビルボ=フロド(そしてサム)が見て紡いだ物語であることもそう。彼らの目で見て、彼らの言葉で語られた「中つ国の物語」であることがブレてないと改めて確認しました。


以下まとまらない雑感
リチャードとマーティンのトーリンとビルボの場面はどれも素晴らしくて、ずっとこの二人の会話を見ていたいと思わされました。
・見ながら「この間の場面はEE行きなのだろうな~」とどんだけ思ったことか^^;
・スマウグさんがあっさり退場なさったので、これなら当初予定の前後編で良かったんじゃないのか??と。
・スマウグさんが中の人並みによく喋ってらしたのが可笑しくて(笑)
・中の人を追っかけてるお陰であれこれいらんこと知ったせいか、スマウグさんが邪竜というより八つ当たりで炎吹き散らして喋り倒した結果落っこちたな印象になってる哀しさです(苦笑)
・バルドのルークがかっこよかったなぁ。
・町の総領の補佐官が最後まで小狡くてうまい役者さんだなと。そして、あの役に蛇の舌を思い出しました...。
・白の会議メンバーの戦い振りの華麗なことに溜息。ひたすら美しかった。
ガラドリエル様が最強なのを理解しました(笑) あの奥方が姑っていうエルロンド様をちょっぴり尊敬。
・正直言いますが、タウリエルとキーリとレゴラスの三角関係と闇の森エルフ親子の確執とレゴラス全部要らんかった...。
・スラ様なリー・ペイスは非常に良くて好きなんですが、突然愛を語られた日にゃ萎えました...。スラ様は嫌なエルフで良かったんじゃないかと...
・PJはラブシーン苦手なんじゃないかと再確認したです。アルウェンとアラゴルンといいタウリエルとキーリといいホント無駄としか思えない挿話と時間な気がしてならない(失礼承知で^^;)
・そんな事に時間を使うなら、もっと他にこう描くことあるだろうよ!!と胸ぐら掴みたくなったです。何様なのは分かってますが...あれこれEE行きだと思うとなんか悔しくて。
・ドワーフさん達やビルボのお歌はどうなったの?! 「思いがけない~」の時点ではお歌大事だから歌を入れるって言ってたじゃないか...!! と結構そこはグジグジしてます...(原作ビルボさんの超絶可愛い「いとくりてんてん」がなかった時点で諦めモードでしたが)。
・PJは自身が好きなこと詰め込みすぎだと遠い目になり。
・とは言え、ビルボの軸が原作からほぼブレてないのは流石だと思うです。

あれこれグダグダ書いてますが、観てよかった何度も観たい!な作品であることには変わりなく。大好きです!!
ってことで、明日朝一2回目見に行きます(笑)