2016年4月9日土曜日

映画『ルーム』雑感感想

 久しぶりにこちらを更新。個人的にとても重くて辛いと感じた部分があったので、Twitter(ふせったーの追記)を使ってあげてしまうのは抵抗がありこちらで長々と書きます。

 以下 映画『ルーム』(公式HP: http://gaga.ne.jp/room/ )のネタバレ含む箇条書き雑感。



・監禁されてる女性と監禁中に生まれた少年の物語であったんですが、現代日本における「母子カプセル」(こちらのサイトhttp://www.sentence-ov-desire.net/entry2.htmlを参照しました。) と置き換えることも可能だと思いました。イメージしたのは冷えきった夫婦間で子供が生まれ、両親との物理的や心理的に離れていて、密室化が進む中で周囲の協力も得られず子育てする母子。大きな根っこは違うのかもしれませんが、似たような状況なのでなはないのだろうかと思わずにはいられませんでした。
 勿論、「監禁」という異常な状態がジョイに過大なストレスを与えているは理解しています。そして、ジャックがそんなジョイにとって唯一の光であり救いであり「天国から落ちてきた」と頻繁に表現するくらい彼女にとって「生きる意味」となったのは痛いほど伝わったし理解しています。

・ジョイとジャックが共に依存しあう関係となっているようにも見え、それ故にジャックの「いいこ」っぷりにしんどさを、ジョイの爆発するような感情の高ぶりに辛さを感じたのかもしれないです。特に、ジャックが切っ掛けとなりジョイが監禁相手に肉体的に苦しめられた後にジャックが只管自分を責めてジョイの許しを乞うように「ごめんなさい」と縋る場面は、幼い時の自分が過って堪らなくて辛くて嗚咽が零れそうになりました...。ああすることしかできなくて、どんどん自分を縮めて「いいこ」になろうとするんですよね...。そして、母親が望む子を無意識に演じてします(例:入院したジョイを待ってる時にレゴで遊んでいたりとか)。なので、後半ゆっくりとジャックが一人で歩もうとする様子、ちゃんとジャックの成長を支え送り出すジョイの姿がどれだけ嬉しくて美しくてホッとしたか!!

ジャックとジョイの共存依存的な描写は結婚するまでの母と私の関係と被ってしまい、ジャックの辛さとしんどさも解るし、監禁された状況とか意に沿わないSEXを強要されるジョイの辛さ苦しさも女性として解ってしまうから...ほんとに観終わった後の疲労感が凄かったです。

・インタビューに答えるジョイのパートで幾度かスローモーションになる場面がありましたが、あれは多分悪意はなくてもセンセーショナルな編集をされ、「他の男性とも関係があった。」とか「尻軽」とか「逃げられたのに逃げなかったのは相手に愛情があったからだ」とか「痴話喧嘩があったからじゃないの? 相手が失業して養ってもらえなくなったから逃げたんじゃないの?」的な悪意ある状況が生まれることの示唆なんだろうかと思ったりしました。
 被害者は被害者なんです!! とどんだけ声を上げても、弱者を叩くのが好きな大衆はいなくならない怖さをあれで感じました...。

・物語がジャックの語り中心で動いていくのが素晴らしいと感じました。ジャックが「初めて」触れ見て感じて驚いて考える戸惑い恐怖する。それらつ一つが一切無駄のない雄弁な映像と音楽で示される美しさ!!! それだからこそ、ジャックが初めて触れた「世界」の途轍もない広さ深さ美しさ可能性が見る側に伝わり、私達のいる「世界」がジャックの目を通して再構築されるような感覚にもなりました。

・色づき樹から落ちる葉、空の色、触れる風や匂い...世界は本当に驚きに満ちていて、ほんの少し視点を変えるだけで美しく常に刺激を与えてくれるんだと思うと泣けてきて...。

・ジョイの母親と同棲相手であるレオの存在に救われました。特にレオという第三者的な視点があることでジャックは救われたんだろうなと。

・ジャック役のジェイコブ君が素晴らしかった!! 「世界」に触れた時の驚き、戸惑い、恐れ、喜び、好奇心という心の動きをあれほどまで僅かな目と表情と身体の動きで絶妙に表現するって凄いと感嘆するしかなく。

・『ブラック・スワン』以来、久しぶりのトラウマ映画だったかもしれないです^^;; 

4/10 18:23追記
 ふせったーで書いたものを転記。上記と重複する部分もありますが、自分の備忘録として。

・物語がジャックの語り中心で動いていくのが救いとなったし、その視線が大変素晴らしいと感じました。
 ジャックが「初めて」触れ見て感じて驚いて考える戸惑い恐怖する。それらつ一つが一切無駄のない雄弁な映像と音楽で示される美しさ!!! それだからこそ、ジャックが初めて触れた「世界」の途轍もない広さ深さ美しさ可能性が見る側に伝わり、私達のいる「世界」がジャックの目を通して再構築されるような感覚にもなりました。

・色づき樹から落ちる葉、空の色、触れる風や匂い...世界は本当に驚きに満ちていて、ほんの少し視点を変えるだけで美しく常に刺激を与えてくれるんだと思うと泣けてきて...。

・ジョイの母親と同棲相手であるレオの存在に救われました。特にレオという第三者的な視点があることでジャックは救われたんだろうなと。

・ジャック役のジェイコブ君が素晴らしかった!! 「世界」に触れた時の驚き、戸惑い、恐れ、喜び、好奇心という心の動きをあれほどまで僅かな目と表情と身体の動きで絶妙に表現するって凄いと感嘆するしかなく。

・メディアでセンセーショナルな編集され、それを通してスキャンダラスとして消費されていくような雰囲気があってゾッとしました。サバイバーを責めたり貶めたりするネタを探し報道するのではなく、渦中から離れて年月を過ごし心身の健康を取り戻した後に、想像を絶する状況から「なぜどうして生き残ることができた」のかを冷静に検証することだと思うのです。検証といっても、サバイバーが語りたいと思った時に初めて行われるものでないのかと...。

・家族の在り方も美しく優しく強かったなぁ。感情的に責めたり自己憐憫に陥ったりせず、娘と孫が「世界」とゆっくり戻ったり出会って行くのを慎重に丁寧に暖かく見守ってる姿に心打たれました。バァバがジャックの髪の毛を着るシークエンスは最たるもので...。待つ苦しさはあっただろうけど、それができるだけの強さと信頼する気持ちを思うと美しく気高い場面だったように思います。

4/10 17:41追記
https://twitter.com/umi_hiyoko/status/718844059645677569
 で書いたことが自分でも巧く言えてないなぁと思ったのでこちらで追記。
 最近あった中学生監禁事件でもこの作品でも独身男性が女性を監禁することで買い物の内容が変化するのに、なぜ周囲は気づかなかったのかというのがとても疑問に感じました。また、男性にとっては買いにくいであろうサニタリー用品を監禁者は一体どうしてたんだろうかと...。監禁されてる女性に外部接触させるわけもないだろうし...。ドラックストアーを点々としてたり、購入時に妻帯者や姉妹持ちを演じて居たのかもしれないけど...とかウロウロしたんです。
 そして、ほぼ毎月ある生理に伴うサニタリー用品って女性には必須だし商品の微妙な差異に拘るものであると思うんです。それらを逐一嫌悪感を抱く監禁者に説明する苦痛やしんどさで更に追いつめられるのは想像に難くなく。そういう細かい部分で追い詰められてどんどん無気力になっていくのだろうなぁ。その無気力さから解放されたのが彼女自身の子供だったり両親が自分を探してるという情報だったのだろうと改めて彼女たちサバイバーの強さに感嘆と尊敬の念を抱いたりもしてます。